罪~ある温泉旅館の一夜~【作・演出 蓬莱竜太】 公演情報 アル☆カンパニー「罪~ある温泉旅館の一夜~【作・演出 蓬莱竜太】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    家族という名のジグソーパズル
    外に書く蓬莱作品にハズレなしの予感的中。申し分のない秀逸舞台でした。
    特異な家族の物語ではなく、家族構成員の一人である、人間なら、誰でも、思い当たるシチュエーション芝居に、何度も、琴線を揺さぶられ、胸に覚えあるような台詞や場面に遭遇し、まるで、この家族の一員であるかのような錯覚すら覚えました。
    この家族の過去のある出来事に起因する、各人の思いが露呈される過程が、実に秀逸にして、精密な舞台構成で、各人の台詞の間が、実に絶妙。押し黙った人間の心の声まで、、聞こえる的確な間の取り方に、プロの役者さんの力量を感じさせられました。SPACE雑遊は、今日が楽でしたが、まだアルテリオ小劇場の公演があるので、お時間のある方には、是非にもご覧頂きたい、☆5つでは足りない舞台、今年4作目の傑作でした。

    ネタバレBOX

    木製の道具だけで作られたシンプルな舞台設定。きっと、木は、家の象徴なのでしょう。久しぶりの家族揃っての温泉旅行。その旅行の意味合いも、各人の捉え方は、自分本位。
    ある出来事に関する、自分の思いをそれぞれ、誰にも明かさず、その話題を避けて過ごして来た、4人の家族が、早々と布団が引かれた部屋で、特に、会話の糸口もなく、見始めたテレビ。そのテレビが突然故障したことから、今まで遠ざけて来た話題に誰ともなく、導かれて行く。その自然な過程描写が、本当にドキュメンタリーでも観るように、自然で、きっと、誰でもが思い当たるシーンや台詞にドキッとさせられたのではと思います。
    息子の知的障害の原因に、家族それぞれが、罪の意識を感じていて、そのことを実際告白するシーンと、誰か一人の心の中のイメージシーンとの違いを、照明や雨音などで、巧みに差異表現する術が優れていて、余計、各人の思いが、我が事のように胸に沁みました。
    妻と娘の思いが語られ後、これで、夫の罪意識の理由までが具体的に語られたら、一気に作り物めくなと危惧したら、そんな蛇足台詞はなく、それがまたこの芝居の格上げをしました。
    後半に、こういうラストではと予測した通りの、秀逸なるラストシーンに大納得。妻が、売店で何気なく買って来たジグソーパズルが、この家族の姿を見事に象徴していました。皆が、思いを吐き出した後に、パッと付くテレビという設定も、蓬莱さんの作劇の妙を感じさせ、粋な演出でした。
    ただ、一つだけ、気になったのは、息子の障害の様子が、自閉症か、アスペルガー症候群的に見えたのですが、この二つはどちらも、後天的な病気ではなく、また、高熱による脳障害だとしたら、生後間もなくの高熱以外では、こういった障害にはならないのではと思ったことでした。
    蓬莱さんは、「まほろば」の時も、閉経後の女性心理をイメージで捉えられていたことがあるので、この息子の障害の設定も、もしや思い込みだけで書かれたのではと、ちょっと気になりました。

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    2010/03/24 23:07

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