満足度★★★
シューマンに関することに関すること
「君は机たたきについて何も知らない。机はなぁんでも知っているんだよぉ」
東京イボンヌ『シューマンに関すること』より
________
人間何にキレるって、楽しみにしてた芝居観に行ったら、隣の席の人間が音憚らずに始終盛大に鼻水すすってるのにキレますよ。
花粉症の時期だから仕方ないのかもしれないけど、1時間30分、知らない女の洟すする音を間近で聴き続けるのが気持ちいいかと言ったら、他は知らないけど私はお世辞にもイヤですよ。
「ここで私がブチ切れて暴れだしたら、たぶん役者さん達もどうしていいかわからなくて困るだろうな」
とか思いながら90分、なるべく隣の人から顔を離すように、腰を曲げて拝見いたしました。
みなさまも鼻水女(男にも)にはお気をつけて。
ライブハウスとかだったら離れちゃえばいいんだけど、芝居はそうはいかない。
_________
以下は東京イボンヌ様が公演した、『シューマンに関すること』のレビューです。
東京イボンヌは、「前の席で観たほうが面白い舞台を作る劇団」です。
普段、私は舞台を観に行くと、舞台から近すぎず遠すぎずの席に座ることにしています。
あまり遠すぎると観客の頭ばかりが見えて舞台の世界に入り込むことができないし、
かといってあまり近すぎると、役者さんの舞台用の発声や表情が自然体でなく、
胡散臭いのが諸見えで、それはそれで集中できないからなのです。
が、イボンヌさんの舞台はできる限り前に座って拝見します。
なんでか。
東京イボンヌの演技はなんか自然体っぽくて近くで観ても平気だからなんでしょうね。
誰一人としていわゆる舞台らしい演技、をしていないのが、この劇団の特徴だと思います。
『シューマンに関すること』
作曲者ロベルト・シューマンに憧れ続け、ついには自身をシューマンの生まれ変わりだと思い込んだ日本の音楽家の物語。と、ありていに言ってしまえばそういう話。
舞台を見終わってから、シューマンの生涯に興味を持ちました。舞台で知ったシューマンに関することがあまりにも面白かったので。
で、作曲家ロベルト・シューマンのことをネットで調べれば調べるほど、舞台の中で話されなかった興味深い濃いエピソードが数多く残されている事に気付きました。
それこそ、一つ一つのエピソードがそのまま独立して、各々1つずつ舞台で作れそうなほどに。
そんな中で必要なシューマンのエピソードをピック・アップし、かつ(誤解を恐れずに言えば)不必要なエピソードをあえて削除し、厳選されたシューマンネタで勝負するイボンヌさんに脱帽。もっと組み込みたい部分もあったのではないかと思うのですが、あんまりシューマンのエピソードを詰め込みすぎて、ただの逸話の集大成みたいな舞台になったらそれは、東京イボンヌの演劇ではなくなってしまう。