満足度★★★★★
他人家の食卓
最近感覚を中心にして観劇する芝居が主だったので、久しぶりに現実的な感触の残る丁寧な脚本に触れた印象。
産まれた時から刷り込まれる「食」のリアリティは、時には思想よりも厄介なもの。「正しい食生活を」なんて言ってたってコンビニ食は便利だし、冷凍食品やジャンクフードでも子供は育つ。ライフスタイルとイートスタイルの多様な兼ね合いが可能になっている現代の「食卓」は、なるほどその分複雑で奥が深い。
ストーリーの展開よりも、個々人の食に対するリアリティを善悪を前提とした一辺倒な押しつけとしてではなく相対的に対比させた中でみんなが「やっぱりなんとなくいいよな」と思う食卓のあり方をにゅるっと絞り出す、そんなフラットさがよかった。食の中から日常や人生もふと垣間見える。ある意味典型的ではあったがいやらしさは感じなかった。
特に印象に残ったのがよしながふみ「きのう何食べた?」を参考にしていると思われる二人の食卓に対するリアリティ。彼らを食卓をテーマに対比される一要素として設置したことで、マンガで扱っていた主題や本質がより明解に見えていたのに感動。数多のマンガ原作TVドラマ&映画もこんな風に一番大事な部分を取り違えなければいいのに。
ピキピキハキハキな演出は個人的に少々五月蝿くついて行けない部分もあったが、概ね楽しく観れる範疇。
次回公演案内からも窺えたが今回はいつもの公演と毛色が随分違うということなので、次回も観てみたい。