実演鑑賞
満足度★★★★★
もう一つの4月の猩獣と比べるとドラマ性が濃くなっていて複雑になっているが、複雑なようでシンプルな話だと感じている。
大切なもののために力をふるうこと。力をふるうときに見えなくなってしまうもの。それを取り戻す為の光。
小さなことから引き起ってしまう動乱は大規模で、生き残れた者たちよせめて幸せたれと願う。
その壮大さをあの人数でやってのけるのがすごいなと思うし、美術として取り入れた黒カステラ(大小それぞれの斜面台)のまだまだあった可能性を存分に活用・披露してその壮大さに拍車をかけてるのがすごい。
墨絵と台しかない舞台が、家にも城にも城壁にも戦場にもなる。
観客の想像力を信頼してくれる作劇と演出がとても好きで、こちらもより信頼して表現に身をゆだねて存分に想像できる。
この作品で個人的なお気に入りは母を演じられている藤島さんのお芝居。
母性、簡単には言いたくない言葉だし軽率にくちにするのはあまり好きではないが、藤島さんの母の芝居にはすごく「母性」を感じる。
しかもそのベクトルはこの作品一つの中でもまちまちで、真っ直ぐだったり、歪んでいたり、優しく弱々しくもあり、でも総じて「「母」だ…」と思ってしまう芝居の力がある。
狂気…という単純には表現しきれない、悲しみに落ちてしまったシーンの芝居がいい意味で恐ろしい。
本当にくるってしまってもフィクションとしては成り立たないし、付け焼刃でやっては説得力がない。塩梅が素晴らしい芝居だった。