実演鑑賞
満足度★★★★★
よくよく考えれば「こんなの台詞や言葉の説明なしにどうやってわかるんだ!?」というような内容と世界観を、見事に芝居・殺陣・演出で成り立たせていて唸る。
謎のしっぽをつかめるようでつかみきれない、そうしている間に目まぐるしく技巧たっぷりの殺陣に心と目が躍る。
台詞がないこと、は割と頭からすぐ抜けてのめりこませられるのは五彩の神楽ひと月目からそうだったが、それでも4作観てきていても「まだこんなに違う色が出せるのか!」と驚く。驚けることに驚く。
最初の主人公の行軍→戦闘シーンだけでも殺陣の充実感がすごいのに、そこからあらゆる武器・あらゆる戦い方が出てきて、殺陣の濃度も熱もどんどん上がっていくのがたまらない。
切りあい殺し合いだが、一線を越えて気持ちよさを感じる。
そうそうこういう殺陣も観たいんだよ、という満足感。
フェスというのも納得。
つかみきれないストーリーラインへの志向が常に脳内で稼働しているうえに、その殺陣への興奮がやってくるので、頭が全身が発火しているのか?というくらい熱くなるし、それが楽しい。
考えてみて!と、考えるな感じろ!の塩梅がとても好みだった。
演出・動きについて、思い返して考えれば「たぶんこうしているんだろうなあ」というのはわかるが、いざ目の前で観ると「今どうなった!?なんだ!?」とまるでマジックでも観ているかのような興奮でいっぱいいっぱい。
ひとつひとつは単純(簡単ではない)でも、それを複数人が交差する舞台上で、観てる間はそこに意識が割かれないよう「当たり前」のようにそれをやっていくのが、この劇団の作る座組の強みだなと思う。
魅力的なゲストが多く、それぞれ存在感や殺陣力・芝居力が大変良かったが、何より中心の主人公たちのスター性ある殺陣芝居がよかった。
華やか…ともまた違う、映える、目を引き付ける殺陣だった。
両側から迫る稼働台に助走なしで垂直乗りする主人公たち(それぞれシーンとしては別だが)など、すごすぎて思わず観ていて笑いが出てしまった。
熱量があり、フェスのような殺陣乱舞が印象的な作品ではあるが、個人的には冒頭・二人(ひとり)が向き合うところ・ラストシーンのしずけさが一番好きなところ。
演出も、芝居も。
緩急とはまた違う、この作品のクールさ…熱量のねっこにある低体温さをそこで改めて感じられるのが良かった。
不満点ではなく希望の話で、動きや稼働台の使い方が鮮やかでダイナミックだったので、もう少しだけ幅広の舞台でも観てみたいと思った。
アの幅ゆえの感覚だったのかもしれないが、「もっと!」を求めたくなるくらい、座組が放つエネルギーがすごくてみちみちだった。