実演鑑賞
満足度★★★★★
五彩の神楽第三弾、心踏音。五彩の神楽初演を配信でみた中で一番好きだと思ったお話です。お話自体は「とてもとてもしんどい辛い苦しいどうしてそんなことに息ができない」をマシンガンで雨霰のようにこれでもかと打ち込んでくるような感覚に個人的にはなりますが、なんといってもこのお話が好きな理由は、舞台のもつ総合力の強さを感じた作品だから。できないことが少し多い主役ふたりを繋ぐ音の力、主人公とリンクした照明、そこから浮かび上がる見えない世界、そして台詞がない舞台で叙述トリックをするという圧倒的な構成力の強さに加えて、殺陣がよりいっそう物語の中に落とし込まれているという部分があまりにも好き。
配信という画面越しでも伝わる力があるのが心踏音だと思っていましたが、それを凌駕してくる生の舞台の強さ、圧巻でした。あんなに楽しそうに心を通わせる、あんなに怒りに満ちて息を殺し剣を構える、あんなに辛くて苦しそうに決意をして鈴を鳴らす、あんなに悔しそうに足音を踏み締める、そしてあんなになっても笑って肩を叩く。その全てを観ているこちらに全力でぶつけてくれる舞台上の空気を全身で浴びれたこと、貴重な体験をさせてもらったとしか言いようがないです。
今回はさらに人間CGとして「とあるシーン」が出現!初演の主役お二人がもう一度同じ舞台にいるという安心感もあったからこそ、新しいチャレンジがここでできたということもあるのだとは思うのですが、初演の内容を知っている人間としてはどこで人間CGが出てくるのだろうか?とずっと考えていて、そうしたらまさかの展開。しかも時間で言うと相当長い時間で発動するので、本当にど肝を抜かれてしまい、初日そのシーンが終わった瞬間ひとりで拍手をしてしまいました。もしかして壱劇屋さんにできないCGはないのでは?巻き戻る際のひとつひとつの動きがカッコよく洗練されていてアクションモブの皆様に拍手しかありません。
公演が終わった今でも、晴れた日にはふたりの洗濯物をする幸せな姿を思い出すことができる本当に本当に素敵な舞台です。大好き。