HAMLET!! 公演情報 宝塚歌劇団「HAMLET!!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    宝塚でなく一般作品としてもまずまず
    宝塚のバウホールで上演される公演は宝塚の小劇場公演とも言え、軽快なコメディーや古典の佳作など宝塚の座付き作家兼演出家にとっても大劇場の演目と違い、いろいろな冒険ができる。そのバウ公演メンバーが上京して日本青年館で公演を行うのが通例となっているが70年代は西武劇場(現パルコ劇場)で上演されていた。
    バウ公演は2番手、3番手スターなどの若手を主役にすえ、将来のトップ候補としての経験を積ませるわけで、バウ公演の主役を張るということはトップスターへの登竜門を意味するのだ。従って観客の中心は御贔屓の若手スターのトップ就任を夢見る熱心なファンであり、よほどの宝塚好きでないと足を運ばない。今回は久々、浦島太郎気分で観劇した。
    ポスターを見ると、主演の龍真咲はブルーのカラーコンタクトをしているのでギョッとした。宝塚でもここまでするのは見たことがなく、あくまで撮影用らしいが、彼女の意気込みを表している。
    宝塚の歴代ハムレットは春日野八千代、越路吹雪、真帆しぶきで、いずれも宝塚を代表する大スター。龍が4代目で、「ハムレット」を上演するのも40年ぶりとか。歌劇団の龍への期待の大きさを伺わせる。
    日本青年館公演では経費節約のため音楽は録音というのが当たり前だったが、今回は生バンド。電飾を使った舞台美術も大劇場公演に優るとも劣らない豪華さである。
    今回の公演は、宝塚という枠をはずして観てもじゅうぶん楽しめる「ハムレット」だった。昨年観た明治大学文化プロジェクトの公演と構成なども似ており、わかりやすかったが、さほど新味は感じられなかった。

    ネタバレBOX

    場内でまず感じたのは客席の熱気の少なさだった。よく確かめないで買ったのだが、この日は初日だったのだ。にもかかわらず、1階席の前方のみファンクラブが陣取って揃った拍手をするが空席も目立ち、私が座った2階席はガラガラで、なぜか前3列は空いている。ファンクラブの抑えた座席なのかもしれない。以前ならありえない光景だ。これが十年くらい前なら、平日昼でも2階席までぎっしり埋まっていたし、前が空いていたら、少しでも近くで観たいのでみんな黙って座っていたりしないで、前に詰めてしまっただろう。というより、ファンクラブスタッフがやってきて空席が目立たぬよう「前に詰めてください」と指示するにちがいない。料金は前でも後ろでも同じなので。青年館公演でも初日のチケットはなかなか入手できなかった往時と比べると隔世の感がある。主役の動員力はスター争いにも影響するので少し心配だ。
    物語はハムレットの死後、つまり事件がすべて終わってから、亡霊たちが追憶するかたちで始まる。しかし、必ずしもこの構成に新鮮味を出しているかというとそうでもない。冒頭に亡霊たちがうじゃうじゃ出て踊る以外、物語が始まってしまうといつもの「ハムレット」だからである。ロックオペラと銘打ったが、ロック音楽を使ったこと以外、特徴はない。古典だけに宝塚では限界があるだろう。だが、亡霊を出すなら、もう少し、脚色して死後の特異性を出してほしかった。だが、長時間の戯曲を巧く2時間30分にまとめてある。劇場側の開演アナウンスがあってから風の効果音が長く続いたあと通例の公演主役の宝塚スターによる開演アナウンスがあるが、スターアナウンスまでが長すぎて疲れる。風の効果音があまりに長いのでスターのアナウンスは行わないのかと思ったほどだ。やはり、通例のようにスターのアナウンスの後に風の効果音を流すべきだったと思う。いつ始まるのかわからないではないか。ハムレットの主役、龍真咲は、ときどき声が割れる以外、演技に破綻なくまずは及第点。少々華に乏しい印象だが案じることはない。いま女優として活躍している真矢みきも意外にも下級生(宝塚歌劇団での若手と言う意味)のころは地味だったし、小劇場ファンにも知られている演技派の久世星佳も地味と言われた。かつてハムレットを演じたという越路吹雪も宝塚時代は主役より脇の3枚目としての印象が強い人だったと聞くし、その点は真矢みきも同様だった。鳳蘭や大地真央のように無名時代に端っこにいても光り輝いていたいわゆる“華のある子”は稀である。むしろ地味な生徒のほうが退団後、女優として開花する可能性が高いかもしれない。龍がトップスターになれるかどうかは知らないが、私の経験から言うと、この人は外でもいい芝居をする存在価値のある舞台女優になりそうな片鱗を感じた。
    墓堀りの3人を狂言回しに使うが、マクベスの魔女役のような不気味さがあって面白い。プログラムにそれとわかる役名が出ていないので俳優がわからなかった。宝塚歌劇団の雑誌の詳しい情報を読めばわかるのだろうが、こういう脇役の生徒は初めて観る外部の人間にはわからない。プログラムに役名の後ろに「(墓堀り)」と明記してほしい。だいぶ以前、「宝塚は脇役の生徒を大切にしないからダメだ」ということを歌劇団の雑誌の誌面上で直言し、「専科」の上級生から賛同の手紙をもらったことがあるが、いっこう改まっていないようだ。
    劇中劇の旅役者の場面は演出上あまり印象に残らなかったのが残念。宝塚はこういう場面が本来得意なはずなのだが。
    組の最上級生が勤める「組長」の越乃リュウがクローディアス。もうそんな学年になったのかと驚く。私が知る頃は地味な役が多かったが、今回のクローディアスは眼帯を付け、宝塚で言うところの「黒っぽい役」で、越乃は2番手のスターが演じているような華もあり、カッコイイ。良い意味で主役より目立っていた。組長が準主役の2番手の役を勤めるのも、以前にはなかったこと。
    オフィーリアの蘭乃はな。狂乱の場面が宝塚の娘役の枠を超え、個性的だったのが良い。うまく表現できないが、宝塚にありがちなお姫さまお姫さましていない確かな演技力があり、小劇場でやるような作品で観てみたいと思わせる。
    ガートルードの五峰亜季は現在「専科」に在籍するベテラン幹部俳優だ。しかし、若手のころと変わらずみずみずしい。もともとダンスの名手で下級生の頃初のニューヨーク公演メンバーに選ばれたが、今回のガートルードは妖艶で演技力で見せる。
    ハムレットのガートルードへの想いというのは多分に異性としての母への嫉妬が含まれており、母の不実をなじる場面はまるで恋人に対するように官能的なのだが、ガートルードによってこの場面が近親相姦のように見えるときと、浮気をみつかったオバサンのバツの悪さに感じられるときがある。
    五峰のガートルードはこの時代らしく若くしてハムレットを生んだであろうまだじゅうぶんに色香のある恋人のように美しい母であった。いつも「ハムレット」を観て思うのは、父王への復讐と言いつつ、母への嫉妬のほうが優って見え、オフィーリアよりもガートルードを異性として愛しているように感じてしまう。
    席の近くに外国人の若い女性3人組が観ていて、身を乗り出して熱心に、楽しんでいる様子だった。宝塚のシェイクスピア劇を彼女らはどのように感じたのだろうか。報道によると、宝塚の欧米公演というのは現地でも好評なのだそうだ。アゲハ嬢のマリー・アントワネット風お姫様ファッションがパリでも逆輸入で流行しているそうだから、日本人が外人の扮装をしても抵抗がないのもかもしれない。

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    2010/03/02 13:43

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  • Pembertonさま

    >2階最前列3列が空いていたのは、そこだけS席だからだと思います。

    そうですね。私がよく観ていた時代は、たとえ平日でも初日に2階最前列のS席が空いていることは
    考えられなかったですね。ファンクラブが抑えてましたし、必ず満席になってましたよ。

    2010/03/22 12:49

    2階最前列3列が空いていたのは、そこだけS席だからだと思います。
    私が見たのは最終日でしたが、やはり二階のS席の空きが目立ちました。(最終日ということもあってスタンディングオベイションは出ていましたが)

    2010/03/22 00:16

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