実演鑑賞
満足度★★★★
名作の名がふさわしい昭和の小劇場ミュージカルだ。曲は古めかしいが、歌の快感があり、何よりも歌詞がよく聞き取れる。小編成のバントとの取り合わせもいい。今風に編曲もできると思う。
主演の大連に流れてきた文士役の浅野雅博がいい。もう文学座では中堅だが、時間をかけて一つ一つの役を積み上げてきた実績がこのまとめ役に出ている。ラサールは、財津のイメージを追えば、この人しかいないということになるだろうが、もっと若い(一回り半くらい)人の方がニンにあう。決して悪いわけではなく座長としての収まりもいいが、この傑作ミュージカル、次回再演の時は思い切った座組で現代化を。時代を超えられる作品だからだ。ことに世界が今、「洪水の前」にあるときは。
演出の鵜山仁は、フォーリーズのメンバーとゲストをうまくまとめている。振り付けもグループのダンスなど、古めかしいが作品に似合っている。ここまで一新して再演されると古典になると思う。同じ占領地ものでも「上海バンスキング」に比べれば再演のしやすい名作である。