天晴スープレックス5 公演情報 ブラボーカンパニー「天晴スープレックス5」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    面白いのでおススメ
    このコントシリーズは初体験です。ブラボー・カンパニーは固定ファンがしっかり付いていて、女性客のほうが多く、私が観た日は中年女性が最前列に陣取り、大うけだった。メンバーは男性のみだが、多くの女性スタッフが支えている劇団。今回のフライヤーはプロレスのコスチュームだったため、「プロレスがテーマなのか?」という問い合わせが何件か来て、スタッフが心配したらしい(笑)。内容はプロレスには関係ない。下北沢演劇祭に招かれ、メンバー一同張り切ってその意気込みを表したのが、このフライヤーだったのかもしれない。
    メンバーの中でも私が特に好きなのは、リーダー格の佐藤正和、そして鎌倉太郎。佐藤正和は普通の芝居をやっても、演技力が安定している俳優で、温かい人柄がにじみ出ているようないい芝居をする。コントでも同様だ。
    鎌倉はかの無名塾出身だから演技の基礎がきちんとできており、いまも無名塾公演に出ているが、そのときの役どころとのギャップがあるので面白い。彼が出てくるだけで笑いがもれているが、必ずおかしなことをやらかす役で、大真面目にやればやるほど、可笑しくてたまらない。
    今回、作家の福田雄一がたくさん書きすぎて時間内に収まらないため、公演期間の後半、一部ネタの入れ替えをやるそうで、リピーターも楽しめるようにするそうだ。
    コント公演は気軽に観にいきたいと思うが、その場合、当日3500円は少し高く感じる。もう少し料金設定を低くしてもよいと個人的には感じているが、福田が既に売れっ子作家のため、あまり安い料金にはできないということなのだろうか。

    ネタバレBOX

    変化-「変」をテーマにさまざまな設定のコントを展開。コントは個々に好みがあると思うが、いくつか、記憶に残ったものを挙げてみよう。
    「ヤク」のアタッシェケースを奪ってきた男たち。鎌倉が麻薬の味見をするうち、意識が朦朧として幻覚が見え始め、それでも「俺がおとりになるから早く逃げろ」と仲間に言う。鎌倉の変なかつらとラリった様子が笑えた。
    東大と早稲田に受かったが第一志望の京大に落ちたから自殺すると言う高校生(太田恭輔)。止めに入った刑事、佐藤正和が中卒で鎌倉太郎が大東文化大卒という設定で、高校生はコバカにして説得しても話がかみ合わない。セレブらしき母親(野村啓介)が駆けつけると、「親に頼らず自分の力で生きていく」という高校生だが、「仕送りは100万円でいい。家賃30万円のアパート、時給3万円のアルバイトで暮らす。別荘は夏と冬しか行かないから」など、まったくとんでもないボンボンだ。刑事のほうが「生きている矛盾」を感じてしまい自殺しようとする。
    暴力団の抗争で殺人容疑者の留守宅に侵入した刑事が次々、証拠写真を撮ってきて提示する話。中に事件とは関係なさそうな容疑者が行きつけの居酒屋の主人の飼い犬やその友達の犬の写真まで出てくる。犬の食べ残したドッグフードを刑事が完食した写真には脱力した。写真の犬が可愛い。
    地上げ屋が家主(山本泰弘)を出て行かせようと試みる嫌がらせが小学生並みの陳腐なもので、特に、山手線の駅名を言っていくゲームで家主が勝手に加わって「新橋」と言ったとたん、駅名が言えずに地上げ屋たちが立ち往生するのが可笑しい。
    脱サラの屋台のラーメン屋(佐藤正和)が「枠にはまった生活や歯車の一部みたいな生き方はイヤ」と言いつつ、サラリーマンそのものの生活で、「9時5時営業」だったり、屋台で部下と市場分析の会議を始め、棒グラフのスライドを見て「うーん。塩が伸びてるなー」などとうなずく。「味噌ラーメン早く」と言われても「自分、不器用ですから作れません」などと高倉健もどきの捨て台詞を吐くのだからどうしようもない。
    アメリカに負けじとジョークを考えるロシア人たち(金子伸哉、保坂聡)はコントの終わりに満足げに「ハラショー」と言うのだが、ジャッジ(鎌倉太郎)の「バツゲーム!」の一声でコサックダンスをやらされる。金子はなかなか頑張って踊っていた(笑)。「赤の広場をおまえの血で真っ赤に染めてやろうか」などロシア語の通訳アナウンス(女性)が可笑しい。
    現代用語を保坂聡がボディランゲージで表現するコントは、本人も受けないとわかっている顔でやっているナンセンスぶりが可笑しい。保坂はナンセンスコントに出ているときの柄本明に共通するおかしみを醸し出している。
    もしもマイクロソフト社がプロ野球球団の経営に参画するとしたらという設定で、ビル・ゲイツ(金子伸哉)の前で広告代理店がプレゼン合戦を繰り広げる話。「鹿児島サイゴウサンズ」で西郷隆盛の扮装で犬を連れたバッターが必ず犬の糞の処理をする、「ナマハゲズ」で秋田のなまはげが刃物をふりかざして野手をなぎ倒していく、「香川うどんず」が丼のヘルメットのうどんのつゆをこぼさずに走塁しなければならないのでアウトになる確率が高い、などどれもくだらないアイディアなのだが、こういうバカバカしさが私はけっこう好きだ。
    コントの精度から言えば玉石混交だが、こういう世相だから、たまには「笑いでうさを晴らす」のも楽しい。
    実は、観劇の前日、モダンスイマーズの公演を観たので、昨年、ブラボーカンパニーのコメディーに苦戦覚悟で挑戦したモダンスイマーズの古山憲太郎のことを思った。シリアスな芝居しか経験していない古山にとっては大冒険で緊張も出て酷評もされたが、必ずや、またブラボーカンパニーに客演してリベンジを果たすと誓っている。彼がこのユニットに客演したらどうなるか楽しみなので、ぜひまた挑戦してもらいたいと思う。

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    2010/02/23 20:25

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