実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/14 (水) 13:00
ある日、怪人ダークダンスとの激闘の際、突如起こった事故で死の淵をさまよい、気付くとボディネーションこと田代大人と怪人ダークダンスの中身が入れ替わっていた。
そして時を経ること二十数年。
かつてヒーローに憧れたものの、今ではすっかりダメ人間として自堕落な生活を送る中年男、大楠義治。突然の来客によって人生をあきらめた男が新ボディネーションになる。
そして、廃墟に住まう謎の少女、ボディネーションこと田代大人の担当看護師、それに剣の達人で生真面目すぎて融通が聞きづらい安岡という女性など、個性豊かでアクの強い人物たちが数多く登場し、それぞれの正義感や使命感が存在し、善悪二元論で押し切るには無理があり、自分の正義感や価値観を相手に押し付けようとすると争いになるなることを導き出し、体はダークダンスだが、中身はボディネーションの田代大人は常に最後まで対話しようとするあり方に、自分の正義感や勝手な使命感、価値観を相手に押し付けたり、相手を憎悪したりするのではなく、たとえどんなに時間がかかろうとも、相手と対話をして解決していこうとすることが平和への一歩であり、戦争や紛争、核戦争を食い止めるためにもじっくり話し合うことの重要性を痛感した。
また、廃墟に住まう少女がかつてお母さんがDV受けていたのを眼の前で見てきてトラウマになってたり、怪人ダークダンスの中身がボディネーションの田代大人がかつて731舞台に所属していた博士が平和利用のために生み出したのがボディネーションというヒーローだった経緯が語られたりと、社会問題や日本の歴史の闇に葬り去られた戦争犯罪の記憶、同調圧力などをさり気なくそれでいて鋭く描いて、炙り出して、浮き彫りにしていて、終始何を持って悪と言えるのか、何を持って善なのか、答えの出ない問いに考えさせられた。そもそも完全な善人や悪人というのはいなくて、大抵は知ってか知らずか二面性を持った人間が多いんじゃないかと感じ、損得で人は動くかも知れないが、時と場合によっては後悔もするし、少しの良心があったりするから、人は生涯思い悩むのではないかと感じた。
劇中に小池百合子都知事の音声を流してきたのには、痛烈な批判精神が込められていると感じ、大変良かった。
メイン舞台とは別に脇にも舞台があって、そこも同時進行で有効に使っていて、映画のような臨場感、没入感があった。