サブマリン 公演情報 マチルダアパルトマン「サブマリン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い!
    初めて行く会場…奥行きがあり とても雰囲気がある。「アパルトマンシリーズ」と銘打った「どこかの誰かの生活を覗き見るように少人数・小規模で上演するシリーズ」であるが、この公演は単に室内生活を覗き見るだけではなく、奥行という特徴を生かした2人の世界以外の風景をも観せる。

    上演前からタイトル「サブマリン」を思わせる揺れる照明、それによって海中にいるような不思議な感覚になる。この感覚は物語が始まって、主人公2人のチグハグな会話によって更に増幅する。

    冒頭、日常会話やコミュニケーションが乏しくなって久しい同棲カップル、晋平と遥のかみ合わない話は、見た目は若いが 既に倦怠期の夫婦のようだ。2人は、晋平が深夜に帰宅し 遥が朝早く出掛けるという すれ違いの生活をしている。日の当たらないアパート といっても4階なのだが、何となく閉塞感があるようで息苦しい。そんな生活を打破するために…。

    登場人物は、2人以外に遥の妹・茜、大家(の息子)、そして男という5人。男は 駅前にいたホームレスで、遥そして茜にとって「この人、私のお父さん」かも知れない。男は一言も喋らないが、その風貌や雰囲気は圧倒的な存在感を放つ。少しネタバレするが、上演前に上手奥で寝ており、間際にムクッと立ち上がり、物語途中から登場する。彼が寝ていた所には、手作りパン店、パーマといった看板が見える。そこに舞台正面の一室以外の風景(世間)が見える。
    (上演時間1時間30分)【青サブマリン】

    ネタバレBOX

    2人が同棲している部屋は、中央にテーブルと横並びに革張りの椅子2つ、上手に玄関、台所(シンク、冷蔵庫、トースター等)、下手に整理棚と別室がある。衣装は状況に応じて着替えるが、やはり普段着・・ジャージやスウェットを着ていると、部屋を覗いている気になる。

    遥(早舩聖サン)は知り合いに子が生まれたから見に行こうと提案するが、晋平(竹内蓮サン)は前から2人で外食する予定だったと 返事を濁す。遥が言う「子」とは、以前行った動物園のゴリラが出産したこと。2人の会話、どちらかと言えば、遥の斜め上から、もしくは斜め下からといった内容に晋平が振り回されているようだ。晋平は結婚を意識し、遥は別れる準備として一人暮らしの物件を探し始める。ある日、遥は駅前にいたホームレスを連れてくる。幼い頃、遥と茜(樋口双葉サン)を置いて出て行った父かも知れないと…。十数年も前に別れた父・・ぼさぼさの髪、古着を何枚も重ね着し、靴下の指先が(穴)破けている、そんな見分けがつかない男が「お父さん?」と訝る晋平。言わば闖入者的存在の男によって、2人の関係が更に歪んで…。

    一言も喋らない男(久間健裕サン)、対照的に機関銃のごとく喋り続ける大家の息子(葛生大雅サン)。この息子の役割が判然としない。2人がいるアパートは近々取り壊す予定、結果的に2人は別れるか、同棲を続けるために新しい物件を探すか、という選択を迫られる。その状況作りであろうか。表面的には寡黙と饒舌、貧困と富裕といった対照人物を登場させ、<一般的な>庶民である2人の暮らしにこそ平和や安らぎがあると言わんばかりである。

    舞台技術は時々、揺れる照明、ブクブクといった効果音で海中を思わせたかと思えば、日当たりを感じさせる格子の暖色照明を照射する。そして演技、ラストの晋平(居酒屋経営が目標)が作った料理を食べた遥と男の表情、遥は不味いと言うが、男は無言で しかめっ面に観客から失笑が。

    物語には暗喩が散りばめられているようで、例えば 幼い頃に飼っていた犬、それを意識してか「ホームレス」を拾ってきたという表現になっている。一度 拾うと簡単に捨てられないは、関係をもったら直ぐには断ち切れない。常識というフィルターを通すとあり得ないことだが、そこにマチルダアパルトマンの一筋縄ではいかない面白さがある。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/10 20:05

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