クリスマス・キャロル 公演情報 劇団昴「クリスマス・キャロル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第一幕50分休憩15分第二幕60分。

    小道具や衣装、美術が素晴らしい。まさにディケンズの世界。チャールズ・ディケンズは学校教育を4年間しか受けられなかった。父の破産の為、12歳から家を出て工場で働くことに。少年時代の痛みと苦しみに満ちた日々はそのままスクルージの過去として描写される。独学で勉強し作家と認められるまでに這い上がる。英国の夏目漱石、大衆の支持する国民的作家へと。彼の最盛期の英国は貧富の差が激しく、「空腹の40年代」と呼ばれた。ディケンズの出世作『オリヴァー・ツイスト』(1838年)は子供を主人公とした世界的に初めての小説。救貧院で育った孤児の物語をリアルに描き、大ベストセラーに。社会を揺るがし児童虐待を禁止する法律まで生み出した。今作は1843年に発表。「この世に生きる価値のない人などいない。人は誰でも誰かの重荷を軽くしてあげることが出来るからだ」、「誰もが沢山持っている今の幸せにこそ目を向けるのです。誰もが沢山持っている過去の不幸せのことは忘れなさい」。

    宮本充氏演ずるスクルージは三國連太郎風味で納得。
    ボブの妻役他の米倉紀之子(きしこ)さんは黒木瞳似で綺麗。
    フレッド役他の加賀谷崇文(たかふみ)氏は布袋寅泰とラフィンノーズのPONを足したようなチャーミングさ。
    大活躍のティム役他の子役、張适(ちょうし)君の透き通った歌声。
    進行役と聖霊役を兼ねた三人のベテラン。林佳代子さん、牛山茂氏、伊藤和晃氏。客席に向けて語りかけ、この世界の境目をじんわりと地続きにしていく手腕。

    クリスマスの一夜の奇跡を大人から子供までたっぷりと堪能させる決定版『クリスマス・キャロル』。
    徹底的な現実主義者のエベニーザー・スクルージ(多分貸金業者)が自分のものの見方や人との向き合い方を自ら悔い改めるに至る奇跡。今作を毎年観に行く人の気持ちが分かる。
    悩み苦しみ足掻いている人にこそ今作は突き刺さる。

    ネタバレBOX

    「未来は変えられないのか?せめてティムだけでも!」

    マーレイの幽霊の鎖が軽そう。その辺からちょっとコミカルな遣り取りが始まる。

    三人目の聖霊を青い照明だけで表現。観客の想像力に委ねられた淡い光はゆらゆらと指し示す。

    スクルージを北野武、マーレイを西田敏行、ボブを大杉漣(亡くなっているが)、フレッドを大森南朋で映画化して欲しい。

    リアルな死を前にしないと人は気付かない。何もかもが消え去っていくことを。消え去っていかないものは何か?果たしてそんなものがあるのだろうか?

    スクルージは金持ちだし、『生きる』の志村喬は市役所務め。死ぬ前に人の為にしてやれることがある。だが殆どの人間は今更後悔しても何もしてやれることはないだろう。ただ無力さに打ちのめされて安い酒を飲む。

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    2022/12/06 20:37

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