ハムレットマシーン 公演情報 LOGOTyPEプロデュース「ハムレットマシーン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    身体表現によって 色々な意味で対比というか 対照を浮き彫りにした公演のように思う。常に舞台上にいるのは2人の女優。とは言え、演者同士が対話をするのではなく、ほぼ一人語りで観(魅)せる。ラスト、演者(女優)の1人がエレクトラと呟き、自分が生み出した世界を閉じようとしている。その言葉が「世界を回収する」である。対比は演者2人の表現の後付けから、期待や希望そして生、一方 絶望や諦念そして死といった反対表現を感じるからである。勿論、上手 下手に離れており交わることはない。上手の演者は始終動き回り〈動〉と〈熱〉を感じる。一方、下手 演者は椅子に座り、上から雪のようなものが降り注ぎ〈静〉と〈冷〉が…。

    何をもって前衛的かは分からないが、少なくとも物語を展開して というスタイルではない。舞台美術は工事現場で見かける鉄パイプのようなモノを組み立て、中央上部にはスクリーンがある。全体的に薄暗く、登場人物は上下黒のパンツスーツである。多くの演者は役名カラス、実態はコロス…喧しさを歌で表し-それは混沌とした世界・社会を現出しているよう。

    先のエレクトラの絶望の淵を思わせる言葉、それでも人間は生きているし、これからも生き続けるだろう。鍛え抜かれた身体、その躍動する肉体こそが生命力を印象付ける。そして対比といえば映像という技術の中に、人工(福島原発光景)と自然(植物や昆虫等)というこれまた違いを映す。戦後77年経ち、社会いや世界が変容してきた中で、この作品を上演することで何か感じ 考えるさせる、そんな意図を思わせる。
    繰り返しになるが、圧倒的な身体表現、その存在と迫力に観入らされた。が、やはり難解だぁ。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし)22.12.5追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は先に記した通りだが、上手に机とタイプライター、下手にブースフレームがあり、女優2人が対照的な動きをする。勿論、視覚による動的・静的という違いは大きいが、カラス群(世界・社会等)との関わりでは、受動的か能動的かといった異なる動きもする。例えばスーツを脱がされるか、自分で脱ぐか といった違いが印象的であった。その裸体に近い姿こそ、虚装を解き放つかのようだ。その動きを思考と行動という言葉、そして自分に置き換えると、ぞっとする。

    上手の女優は、自身の本音か演出か判然としないが、文章(読み上げ)によるモノローグ、一方の女優は 無言で椅子の上で身悶えするような姿態、ソバージュの髪に雪が…その内なる表現方法も興味深かった。
    映像演出も独特であった。映像シーンが変わるごとに音楽も変わる。一般的には流れるような旋律を思い浮かべるが、この公演では 映像・音楽をワンセットにし、ワンシーン完結型の観せ方である。そこには「在る」という事実だけが映る。

    勿論 台詞に「ハムレット」「マクベス」を聞くことが出来るが、敢えてシェークスピアを誇張することはしていない。「ハムレット」の復讐譚、心理劇という個人劇から社会劇、世界的な複雑さ混沌とした情勢を訴えているようだ。それが舞台上を動き回るカラス(コロス)へ投影させて描いているかのよう。

    ラスト、割れたガラスのような光沢板を床へ置き、正面へ立て掛ける。何を意味するのか…描き切れない事象を反射させ、広範で重要なことを示唆するような印象を受ける。まさに 原文の少ない頁を埋めるのは観客自身の感性と言わんばかりである。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/04 17:42

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