実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/02 (金) 19:00
西暦2222年。選ばれた優秀な人間が火星に移住を始めて100年近く経った頃、
かつて地球に存在していた建物・乗り物・生き物などを復元した「万博2222」が開催されている。
物語の舞台になるのは、タバコ屋の軒先で雨宿りするだけの「雨宿り館」。相当な未来が舞台のSF劇なはずなのに、舞台セットも含めてどこか懐かしい感じがして、まるで時が止まったかのような感じに、心地良さを感じた。
「雨宿り館」に毎日通う(四葉)という見た目40代、実年齢141歳の女性が現れる。
遠すぎる日に地球で見た“雨の日の思い出”を探すためということだったが、その過去を想い出した時、その事実が楽しい記憶ではなく、とても辛く重苦しい過去だったことを知り自責の念に駆られるが、「雨宿り館」のスタッフたちになだめられ、励まされ、何とかその重苦しい過去の記憶を心に深く留め、お母さんのぶんまで生きようとする老女四葉の不器用だが誠実でマイペースなようで芯が通っていて、今、この瞬間を懸命に生きようとする力強さに心打たれた。
しかし、最後の方で、ドームを突き破ってデカくて大量の隕石が落ちてきて、四葉らしき人が万博の遠くの方で、その大量の隕石の一部が地面に当たって爆発する、その爆発に巻き込まれたと解釈できるような壮絶な終わり方に、不安と言いしれぬ悲しみを味わった。
ただ、最後の最後で主人公の老女四葉や「雨宿り館」のスタッフそっくりの、おそらくは生まれ変わりと見られる人たちが、「雨宿り館」に似た地球の古ぼけた建物の中で雨宿りしていると、通り雨が去ったあと、狐の嫁入り行列に出くわすという終わり方に、ある意味で狐につままれたような、それでいて少し救われたような終わり方に、少し安心することができた。
米澤剛志さんという俳優が演じたのは、少し空気が読めず、好奇心旺盛だが真面目で距離感がない気象台技師空知という少し捻りのある登場人物でしたが、今まで何回かテントで観た時とは違った新たな雰囲気を醸し出していて、米澤さんの役柄において、新たな新開地が切り開けたように感じた。