実演鑑賞
満足度★★★★
タイトルは「服が腐る」だが、その服を着た女優8人は腐るどころか輝いていた。出演女優は8人〈別に客演男優1人〉だが、主宰・岩井美菜子女史(作・演出)が前説を行い、客として そのまま舞台となっているアパレルショップから出ていくところから物語は始まる。公演は、多くの服に着替え、まるでファッションショーを観ているかのような華やかな世界であるが、その服には消費ならぬ賞味期限があるという。その賞味こそが流行で、それに敏感な乙女心を描いた物語。
舞台美術がアパレルショップを再現したような見事な作り込み。特徴的なのが客席との間に通路のようなスペース、そこをファッションショーで見かけるランウェイに見立てウォーキングするよう。その颯爽とした歩きとポージングは見事な演出である。一見 華やかな世界を想起させるが、その舞台裏であるショップ店員の喜びや遣り甲斐、一方 爆買いに観る心の寂しさ悲しさをしっかり描く。その両面こそ人間そのものであり、物語に込められた肝のように思う。
服が腐ったら捨てればいいが、人が腐っても捨てることは出来ない。クローゼットの中は着飾る洋服でいっぱい、が その中を見られるのは (人の)裸を見られるようで恥ずかしい。洋服とともにある記憶はその人の人生そのもの、を思わせるような劇中の台詞は実に印象的であった。やはり「劇団人間嫌い」は、劇団名とは真逆の人間観察に優れている。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)