『F』 公演情報 青年団リンク 二騎の会「 『F』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    味わい深き、かなしみ
    近未来を舞台に繰り広げられる出会いはずの無い少女とアンドロイドの悲しい物語。


    それにしても、青年団リンクのクオリティーの高さに、昨年から驚かされてばかりである。

    ネタバレBOX

    自然が破壊しつくされ、特殊な温室のなかでしか桜が咲かないような荒廃した近未来。
    弱者と勝者の地位が圧倒的に固定化され、弱者は勝者の世界を夢見ることさえ、許されないような世界。
    毎日、食べるものにさえ事欠く生活を送っていた少女は自らの命と引き換えに、一瞬の「生」を手に入れる。
    少女は、新薬開発の人体実験に自らの体を差し出す。健康体に、不治の病のウィルスを宿し、そのウィルスへの新薬飲むことでつかの間、命を長らえる。
    新薬は開発段階のもので、効き目は定かではない。というより、効果は期待できず、死んだ後の検体に製薬会社の目は向かられている。

    少女は貧困のただなかにある生活に意味なないと考え、人体実験に身をささげることで、お金を得、初めて「人間」らしい生活を手に入れる。
    少女は確実に死ぬことを自覚しながら、一瞬の生に感謝し、後悔は一切ないと言い切る。

    少女は命と引き換えにつかんだ大金で、アンドロイドを購入する。
    その人型をし、感情以外はすべて人間と同じにプログラミングされたアンドロイドは「彼女の利益を守るためにプログラミングされている」という。

    今まで、誰からも人間扱いされたことがなかったであろう少女は、アンドロイドの振る舞いにと毎度ながらも次第にアンドロイドにひかれていく。
    死を自覚すればするほど、アンドロイドへの思いは募り。。。
    当然のことながら、彼女を思うをアンドロイドは受け止めることができない。
    彼女とアンドロイドの思いがすれ違うさまは何とも物悲しい。

    舞台(彼女の命)の終焉に近づき、彼女はアンドロイドに、アンドロイド自身のために生きるよう諭す。
    それはまるで、自分の死を受けう入れながらも、自分の分身として、生きていくことを願うかのように。
    この一瞬の彼女の生が凝縮されているかのように。

    終幕、アンドロイドは何を彼女に囁いたのであろうか。
    また、アンドロイドは彼女を抱え、どこにつれさったのであろうか。

    見終わった後も、想像力をかきたてらる秀作であった。



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    2010/02/01 22:42

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