満足度★★★★★
そして鉄塔がお辞儀する
物語理解力のある子供から老人まで、万人向けではないが万人に開かれていると言っていい作品。
一冊の本の体裁を模した構成をとる「言葉」の舞台。そこに朗読とリアリスティックの間を行き交う静かな演技や、シンプルながら広がりがある演出が加わりきちんと舞台を立体的にしている。
題材や展開こそよくみられる、そしてわかりやすいものだが(ここで具体的に内容やあらすじを述べるのはとても無粋だ)、何せ切り口が滑らかで巧妙。一見不可解な作品説明の文学的な文章も、観ればなるほどすんなり納得できる。むしろこの文の雰囲気を壊すことなく、想像もしていなかった地に足着いた世界観をも展開し、かつ物語としてもしっかり纏めていたので、いい意味で裏切られた。
舞台としての総合力が高く、作品としてもザラザラとした感触を存分にみせる。なにしろこれが旗揚げ公演というのだから驚き。劇団名が長過ぎて覚えにくいのが難点だが、覚えておきたい、劇団ハーベイ・スランフェンバーガーのみる夢。