『黄泉の国でも愛してる』 公演情報 縁劇ユニット 流星レトリック「『黄泉の国でも愛してる』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    初日観劇。
    物語は感動系であるが、その設定は 何となく演劇や小説等で既視感や既読感があり、新鮮味はない。一方公演の魅力は 生演奏で心の内、その想いや情況など、言葉で表わし難い情景を表現して(奏でて)いる。そしてアイドル系の若いキャストが溌剌と、そして情感豊かに演じているところであろう。小説ならば視覚情報がなく、想像力が働くが、演劇となれば観せる(演技)力が必要だ。「泣ける内容」といっても、恋愛ものや余命を描いたものなどジャンルは様々ある。この物語はタイトル「黄泉の国」とあるから、あの世とこの世を紡ぐものであることは容易に想像がつく。
    さて、生演奏は音楽としての魅力は感じるものの、演出としては少し気になることが…。

    スタッフ対応について、当日は長い列の客が並んでおり、人気公演であることは分かった。観客が全員入場していないにも関わらず、(当たり前だが)開始時間には上演を始めた。そのため 途中入場者が多く、前列席へスタッフが案内する際の 人影や物音が気になった。何より途中入場者は、物語の肝の(黄泉の国へ逝った)原因・理由が解らず、面白さが減じたのではないか。スタッフ対応の不手際は、カーテンコール後に謝罪したほどだ。残念。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術、二階は紗幕 そこにヴァイオリン(竜馬サン)とピアノ(真島聡史サン)の生演奏。一階部分は喫茶店、上手にアンティーク風の窓とテーブル席、下手奥がカウンター、客席側に洒落たライトが飾られている。全体的に瀟洒なイメージで、フライヤーの絵柄とマッチしている。

    冒頭、2人づつ 3グループが間隔をあけて横に並んでいる。中央は夫婦、上手に恋人同士、下手は擬人化した猫(姉妹)である。ひょんなことで交通事故が起こり、3グループは亡くなるが、天使か悪魔の戯れで夫婦以外は助ける(現世へ生き返らせる)。夫婦だけは助けることが出来ず、天使は 夫婦に20年後に2時間だけ現世へ戻すと約束する。残された子供4人は叔母さんなどの協力を得て、健気に生きている。しかし、それぞれ我慢もしている。冒頭の3グループ、桐島夫妻の事故の起因と関係しているが、物語の本筋ではない。

    そして10年後、妻(母)の桐生菖蒲(沢田美佳サン)だけが 1日(2時間)だけ帰って来る。逢えないと思っていた母の姿、子供一人ひとりの思いを乗せた望みごとが切ない。実は夫(父)の生き返る分も菖蒲が利用し、10年後に1人だけ帰ってきた。子供たちの独り立ちという年齢、そこへ合わせたような慈しみを描く。子供たちだけで生きるには、「我慢」という重しが付い回る。長男は、自分だけの胸だけに秘めた 父の先妻の子(異母姉)への遠慮、長女は弟妹の生活の面倒を見るため、恋人との結婚を諦めようかと、そして次男は好きな道への進学を、末っ子の二女は大学進学を諦めようとしている。

    この兄弟姉妹を中心に、喫茶店に出入りする人々を絡めて日常の暮らしを紡ぐ。子供たちは、それぞれが優しく思い遣りがあるが、それだけ相手のことを思いすぎて自分は遠慮・我慢している。それを解(説)くような母。そこに「長くて短い奇跡の1日命あるモノたちの希望へ向かう」という意を込める。逢えないと思っていた母の姿、そこに感情移入することが出来れば観応えある物語になるだろう。

    全編 生演奏が奏でられ台詞に被り聞き取れないところがある。特に感情表現(演技)で、小声になるシーンでは肝心な言葉が…。音楽は心情を代弁するような優れモノだと思うが、逆に台詞で生演奏の魅力が半減するようだ。台詞と生演奏のバランス、夫々の魅力を上手く引き出す演出が欲しかった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/11/10 07:10

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