おぼろ 公演情報 ゲキバカ「おぼろ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    楽しい公演でした
    劇団名改名以来、初の公演。舞台と観客が一体となって
    新体制を祝う楽しいお芝居になりました。
    「小劇場系の劇団にとって一番観て貰いたいのは
    同業者やマスコミ関係者。一般客に観てもらって意見を
    聞きたいとは思っていない」という意見を、これまで何人
    かの小劇団関係者から聞いたことがあります。
    趣味で観ている一般客の自分としては少なからずショックでした。
    また、そこまではっきり言わずとも、そういう姿勢が芝居
    から伝わってくる劇団にもいくつか出会いました。
    でも、「ゲキバカ」はそういう劇団とは対極にいるのだ
    と実感しました。
    新劇団名については人によっていろいろな感想があると
    思いますが、正直なところ、劇団名がどういう名前であれ、
    大切なのは中身であります。
    お客を大切にする、気持ちよく帰ってもらう、そういう雰囲気
    が、舞台にも終演後のロビーにもあふれていました。
    アンケートの項目にも積極的なリサーチ姿勢がよく表れてい
    ます。
    前回観たシェイクスピアの世界とはまったく違う
    歌舞伎仕立てのお芝居。
    僭越ながら、歌舞伎や時代劇を長く観ている者の目から見ても、
    みなさん、よく勉強されていると思いました。
    今後の活動が楽しみな劇団です。
    気になった点もあり、☆4つと言いたいところですが、気分よく楽しめたのでご祝儀も込めて☆5つとさせていただきます。

    ネタバレBOX

    開幕時、劇団員全員が舞台に並び、歌舞伎の口上よろしく
    挨拶。
    せめて主宰のかたの最初の挨拶には「一段高いところからではござい
    ますが」の一言が入っているとよいですね。決まり文句ですが、
    口上にはつきものの観客への礼儀なので。
    賑やかなオープニングに「寿ぎ」の気分が横溢して観るほうも
    気合が入る。
    語り部の瓦版屋おきよ(木村智早)がきびきびした芝居で
    導入部、うまくひきつけた。
    登場人物の色分けが明確で無駄な役がなく、人物関係を
    つかみやすい。時代劇のツボをきちんと抑えたうえで、近未来の
    エピソードをうまく嵌め込み、ありがちな話にはならなかった
    のがお手柄だと思う。
    義賊おぼろ小僧(次郎吉)の鈴木ハルニは、あのブスコーとは正反対の
    カッコイイ役どころ。
    次郎吉と銀髪の悪太郎(持永雄恵)、お花(石黒圭一郎)との因縁
    は、池波正太郎の『鬼平犯科帳』に出てくるようで、なかなか良く
    できている。お花の石黒の女形の演技は本職でもないのに巧い
    のに驚いた。声や所作に色気があり、花の鉢を扱う場面など新派をやら
    せたくなった。花組芝居の加納幸和の若いときみたいだ。
    湯屋の場面。後姿、それも裸体で女形を演じるのは本職でも
    難しいものだ。実は、自分は子供の頃、銭湯の常連で許可を得て
    女湯に入っていた女形の役者を見ているが、その人の裸体の
    後姿はちょうどこんな感じだった。
    ただ、宴会芸のような裸で遊ぶ場面は好みではなかった。
    ダンス振付でゲス吉の伊藤今人、柳沢慎吾風で面白かった。
    けん(渡辺毅)は高倉健のパロディだったが、客層が若いせいか、
    「不器用ですから」のギャグは受けてなかった。不器用どころか
    器用に女性の胸を触る役だ(笑)。
    ゆり(夏日凛子)、りん(堀奈津美)の裏切り・誘惑コンビも印象に
    残る。銭形平次(中山貴裕)、おせん(高橋悠)も出演場面に色が
    くっきり出る。平賀源内(西川康太郎)の役の印象がやや薄いが、
    バランスは取れている。Mi・Kと役名がピンクレディーのような
    (UFOでも踊るのかと思った)ウサギの双子(片桐はづき・小堀紗矢香)
    は家に連れて帰りたいくらい可愛い。
    人類が滅亡した地球は灰色で、江戸時代はまだ地球が青く、「ずっと
    あのままだったらよかったのに」という述懐が心に残った。
    悪太郎がお尻百叩きの刑で済むのは、お披露目公演ゆえ暗い結末を
    避けたのだと思うが、強盗が罪もない町人を何人も惨殺して、江戸時代
    に死刑にならないのは理屈としてはおかしい。ま、処理としては
    難しいところだが、一番気になった点。
    もう少し練れば、大劇場でも通用する芝居だと思った。

    *細かい点だが気になったのは雪の形。すごい量の雪が降るが、
    飛んできたひとひらを見ると案の定、四角形。
    芝居でああいう降らせ方をする場合、四角はだめなんです。
    歌舞伎の雪や桜の花びらは道具方でなく、俳優さんのところ
    のベテランのお弟子さんが手作りしてるが、雪は角を
    切って、丸みを帯びて作る。俳優さんの顔や口に当
    たったり、貼りついたりして負担にならないための江戸時代からの
    工夫。また、照明が当たったときの効果も断然違ってくる
    。以前、歌舞伎俳優に直に聞いた話だが、商業演劇などで
    一般の劇場に出ると、劇場側スタッフが四角の雪を降らせるので、
    窒息しそうになることがあるそうだ。
    徹夜で作り直させたというかたもいるほど。
    劇団の方、ここ読んでいらしたら、今後、雪を降らせる芝居の
    ときは参考にしてみてください。

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    2009/12/19 12:50

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