モンキー・チョップ・ブルックナー!! 公演情報 アマヤドリ「モンキー・チョップ・ブルックナー!!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    私の中では、間違いなく今年度ベストワン!!
    脚本、演出、役者のすべてが素晴らしい上に、それらが奏でるアンサンブルも見事。思わず唸るほど。

    スピード感とグルーヴがそこにある。
    そして、舞台から照射されるエネルギーが凄い!

    ひょっと乱舞は「プラスチック・レモン」から観ている。その後の「旅がはてしない」も含め、宿題のように後から考えさせられるという舞台の印象が強かった。しかし、今回は、考えるというより、「今そこに居る」と言うようなライブ感(体験)、つまり舞台の醍醐味が確実にあった。

    ネタバレBOX

    小田の同居人の星野が、ある女性を助ける。彼女は監禁されていたところから逃げてきたと言う。
    星野はバイトに行くために、その女性、三谷を小田に預ける。
    しかし、今度は小田が、三谷をまるで監禁しているような生活が始まってしまう。
    星野や彼の友人たちにはそれぞれパートナーと呼べる人がいて、それぞれに充実している生活を営んでいる。
    小田にはそういう相手がおらず、また自分でも人と付き合うのがうまくないと感じていた。
    そんな小田にとって、三谷が現れたことは彼にとっての僥倖だったのだ。
    しかし、小田と同居する星野と仁村は、小田が三谷を監禁しているような状況が、このまま続くのはあまりよくないと思っているのだった・・・。

    シアタートラムに入ると手前と正面に向かい合うように階段状の客席がある。その客席の真ん中に舞台がある。
    左右にベンチ、そしてちゃぶ台サイズの四角い机が6つあるだけで、後は電話ぐらいという極めてシンプルなセット&装置。
    しかし、この使い方と動かし方がうまい。

    そしてとにかく役者が凄い。
    小田役のチョウソンハさんの凄さは前から感じていたのだが、今回の小田の気持ちの動きと、それを表現する台詞と身体の動きの縦横無尽さは、まるで化け物とかモンスターのようだ。それぐらい凄い。
    また、星野役の小菅さんの柔らかさと自然さにも舌を巻いた。仁村役のコロさんの佇まいにも痺れた。とにかく出演しているすべての役者が良いのだ。

    台詞の重ね方、テンポ、リズム、たたみ掛け方、そして、舞台を挟んで両側にある客席への見せ方、身体の使い方、身のこなし、何をとっても素晴らしいとしか言いようがない。無駄が一切なく、きちっと組み合った台詞と動きにはスキもない。役者たちのフォーメーションとも言えるような動きと位置関係も美しい。
    もちろん、演出の巧みさがそこにあるし、それに応えている役者の肉体と精神もある。

    こう書いてくると重苦しい芝居のように見えるのだが、実は笑いも要所要所にあり、そのバランスも素晴らしいのだ。

    監禁されていたという女性、三谷を3人の女優(笠井・中村・佐藤)が演じる。
    三谷の心の変化をそれぞれが演じ分け、かつ、3人が同時に演じることで、三谷の内面を表している(例えば、座っている3人の、微妙なそれぞれの首の角度などで、それを表していたり)。とても大胆で刺激的、そして緻密な演出だ。

    同居人である星野と仁村が、小田に忠告をするあたりからの展開が凄い。この応酬と小田のヒートアップは鳥肌が立つほど。小田の、星野への距離の詰め方、そのスピードには思わず「おっ」となったりした。

    「自分はプレイヤーではなく、観客側にいたい」と言う小田が、実は三谷と暮らすことによって、プレイヤーに引きずり出されていて、さらに小田は三谷を監禁しているように見えるのだが、実は三谷によって、逆に精神的に監禁されていることが浮かび上がる。

    外に出ることができなくなってしまった小田が、部屋から出ることができた、と思っていたら、そうではなく、三谷という存在の見えない壁の中に監禁されているような幕切れの怖さ。

    そして、壁一枚外の町の音の美しさ。「外」はいつも壁一枚隔てたところにあり、ひっそりとその存在を感じるものであり、自分が参加する場所ではないという感覚。

    ラストに町の喧噪とともに降りてくる枠は、われわれが囚われている「枠」なのかもしれない。冒頭に「監禁」についての問いかけと回答が挙げられていたが、そんな「枠」がそこにあるのだということなのだろう。
    そして、そのような枠に囚われていることに気がつかないことがあるし、一見、監禁する側と監禁される側が逆のように見えることもある。まるで小田と三谷の関係のようにだ。

    客席と舞台が近いので、役者の持つ身体、肉体がそこにあり、「存在している」という実感が強く伴う。
    その「存在」の強い地場のようなものが、役者たちの身体から発せられ、無駄に発散されることなく、見事に一体化され、シナジー作用により増大していく。
    そういうすべてのベクトルが一致したような舞台に出会えたことの感激がある。
    そして、その輝くようなエネルギーに魂まで奪われ、舞台を見続けたのだ。

    100の言葉を尽くしても、やはり何がそこにあったのかは語ることができないのだ。だから、観てよかったと思う。

    モンキー・チョップ・ブルックナーって何のことかわからなかったけど、3人のことを指しているのかな、と思ったり。
    そう言えば、前2回の公演にはかなりのウエイトを占めていたダンスシーンが、今回はなかった。

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    2009/12/18 02:45

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