シャイヨの狂女 公演情報 劇団つばめ組「シャイヨの狂女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     恋は水色を途中迄しか歌えない女性が出て来るが、別の女性が1番を全部歌って教えるシーンがある。これ、作品展開のメルクマールである。一応以下にフランス語の原詩を上げておく。簡単な仏語だから読める人は読んでみることをお勧めする。
    L'amour est bleu
    Doux, doux l'amour est doux
    Douce est ma vie
    Ma vie dans tes bras
    Doux, doux l'amour est doux
    Douce est ma vie
    Ma vie près de toi
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    ネタバレBOX

     J.ジロドゥ原作。翻訳劇の難しさを感じた。至る所に社会風刺、アイロニー、茶化しが組み込まれているのだが、翻訳された文章からフランス語ならどんな表現になるかを類推し、類語、縁語、反意語等々をすぐさま想像しつつ観なければ面白さが激減するのは明らかだし、何故、そこでそのような台詞になっているのかも皆目見当がつかないであろうからである。自分はスタニスラフスキーの演劇手法やメソッド演技のような演技術が好みだが、演技が自然に見える為に役者陣は他国の文化・歴史・政治・風俗・世界に於ける位置等々を知って深く理解して居なければいけないし、作品が演じられる国についても同様に深い理解と階層差による意識の違い等を正確に知らねばならないからである。これら総てを高いレベルで通過してもそれを演技に落とし込めなければ意味は無い。
     上記のような前提で拝見したので、序盤で社長役の演技を観た瞬間、演じていることが演技に現れていて幻滅してしまった。若い役者なら致し方ないが、ベテランと言っていいお歳とみた。それでこの演技は、と思ったのである。鉱山師の演技は上手いと思ったが。
     途中、休憩を挟んで物語のトーンが完全に変わるが、前半は、現在世界中を席巻したと思われる新資本主義(即ち露骨に収奪することしか考えていない資本主義システム)を予見したような内容であり、後半は、これをひっくり返し庶民感覚の生活を取り戻すユートピア実現という形へ収束するが、今を生きる自分には後半はメンタルなレベルで納得できないものの、世界初演は1945年12月だから来るべき資本主義の形をその本質で見通していた慧眼にこそ着目すべきであろうし、第2次大戦中はドイツに支配された歴史から解放された歴史的解放感もあったであろうから後半の展開も作家の心理として自然ではあると考える。

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    2022/10/08 15:12

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