西から昇る太陽のように 公演情報 タテヨコ企画「西から昇る太陽のように」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    とにかく会話のリズムが心地良い
    テンポのいい会話にのまれた感じ。

    ひょっとしたら水面下ではそんな想いが渦巻いているのかということで、既婚者にとってはビター。
    これからの人は「自分たちは違うもんねー」と思うだろうけど・・・。

    ネタバレBOX

    陶芸工房が開設されて1周年を祝うパーティが行われる。
    その工房で行われている陶芸教室に通う主婦たちと、彼女たちの夫が訪れる。

    主婦たちが胸に秘める夫との関係が会話の中から露呈していく。
    ときめきを求める者、転勤に従わない者、子どもを事故で失ってから夫婦の中がうまくいっていない者、教室の若い先生と不倫をしそうな者。
    彼女たちに共通しているのは、夫の自分への無関心さだ。

    彼女たちの不満に気がついた夫たちは、自分も妻と同じ陶芸教室に通ったり、自分の気持ちを吐露したりするのだが、彼女たちの心の中に溜まった不満は厚く、その程度では晴らすことはできない。

    さらに、工房の大先生の後妻は、先妻の子どもとのコミュニケーションがうまくとれず、イライラしている。大切に飼っていた犬もいなくなった。

    そんな中、不思議な男が工房に訪れる。記憶喪失なのか、自分のことが思い出せない。
    その彼を工房の息子は、子どもの頃一緒に遊んだといい、さらに姿が昔のままだと言う。

    彼は一体だれなのか、そして、皆が抱える不安や不満はどこへ行くのか、という物語。

    他人の家のことには平気に、そして強気に口出しできるけど、自分ちのことにはからっきし、みたいな感じ。
    物語の解決または解決の糸口のようなものが、それぞれ見えてくるのかと思っていたら、そんなご都合主義的なラストを迎えることはなかった。不思議な男の正体も、本人は主張するが、それは本当なのかどうかもわからない。

    つまり、解決はなし、なのだ。ま、現実はそんなものかと思ったりするのだが、何か方向だけでも示してほしかったような気がする。
    和解はないのか、分かり合えることはないのか、ということだ。

    皮肉なことに、工房を建てた大工の娘と若い大工はこれから結ばれようとしている。今目の前では、結婚のなれの果てたちの姿があるというのにだ。

    謎の男の、物語への関与の仕方がうまいと思う。単なるリアルなものだけではなく、ちょっとした隙間に、伝承とともにうまく差し込んできたなと感じた。しかも、それも変にファンタジーとならないところがニクイのだ。

    とにかく、役者がうまい。
    冒頭、2人の男性の最初の台詞には、「・・・」と思ってしまったのだが、そこにいる和美(舘)がその2人のテンションをうまく持ち上げていて、「これはいいぞ」と思った。
    そしてさらに、伸子(仲坪)と昌江(椿)が登場すると、もう、舞台の雰囲気は一気にヒートアップした。
    とにかく全体の会話にグルーヴ感がある。
    役者、特に女性陣の会話が、リズム感があるというのだろうか、とにかく素晴らしい。最後まで引き込まれた。決して長い上演時間ではなかったが濃厚な印象が残る。

    そして、タイトルの「西から昇る太陽のように」なのだが、台詞にあったように、あるアニメの歌の歌詞(たぶんバカボン)だそうで、それを聞いて、太陽が西から昇るのだと和美は勘違いしたそうだ。
    この作品の作者は男性だということだ。作者の性をもとに考えてしまうと(ひょっとしたらフェアじないかもしれないが)、タイトルの意味するところは、主役である主婦たちの「思い込み」について述べているのだはないかと思うのだ。

    それはかなりイヂワルな見方かもしれないが、「アニメの歌詞により、誤った知識をすり込まれた」=「(世の中にあるいろいろな情報から)夫婦とはかくあるべきであるという思い込み」(自分たち夫婦にとっては誤った情報)にとらわれてしまった女性たちの話なのではないかということだ。
    すなわち、彼女たちの思い込みは、「自分のところの夫婦関係はそうではない」それは「夫が自分を構ってくれない、理解してくれない、見てくれない」からだという感情を生んでしまい、それが不満となり鬱屈していくのだ。

    もちろん、それに気がつかない夫の本当の鈍感さもあるのだろうが。

    太陽は西から昇らないということは、学校で教わって知ることはできたのだが、夫婦の関係はかくあるべきだ、ということについての答えは誰も教えてはくれないだろう。
    というより、他の主婦たちがそれなりにアドバイスをしていても聞く耳を持っていないようだ。
    夫の声も耳に届かない。
    答えはないだろうし。自分で出す以外には。

    作者の横田さんは既婚者だろうか、そうだとしたら、自分の奥さんに「おまえの考えていることは、西から太陽が昇る、ということなんだぞ」とこの舞台を通じて伝えているんだったりして・・・ま、そんなわけはないけど(笑)。・・・夫の鈍感さもあるんだし・・。

    こうなると、一体この夫婦たちはどうなるんだろうと見ていて、少し不安になるのだ。もちろん自分のことを振り返ってみて。

    ・・・なぞの男が訪れた森野夫妻には、ほんのちょっとだけ何かが見えたようなのだが。

    だから、「結果」が、それも「少しハッピーな結果」がほしい観客が多かったのではないかと思うのだ。そうなると単なる人情モノになっちゃうんだけどね。

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    2009/12/13 08:21

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  • tetorapackさん

    コメントありがとうございます。

    奥様にお話になったんですね(笑)。
    奥様孝行をなさっているtetorapackさんには、万が一にも関係ないとは思いますが、「陶芸教室に行きたくなった」と奥様に告げられたら、何かを自分の胸に聞いてみないといけないかもしれないでしょう(笑)。

    >私は「無理にまとめない」作風に好感が持てました。確かに青年団テイストっていうか……。

    そうですね。青年団だと特別に何も起こらないから、まとめなきゃいけないこともないというか。何かを提示してくれますよね。今回はいろんなことが起きているようで、根っこは1つの印象ですが、やっぱりちょっともやもやしちゃいます(笑)。

    2009/12/14 18:35

    アキラさん

    アキラさんも観られたんですね。私は、どういう訳か今回が初見でした。

    >ひょっとしたら水面下ではそんな想いが渦巻いているのかということで、既婚者にはビター

    はい、まったく、その通り(笑)。
    同時に「女性って怖い」って、つくづく感じさせられて、帰宅後、女房殿に作品のことなどを話したら、「あら、それって、人によってよ」って、あっさり笑って切り返されちゃいました(笑)。

    >だから、「結果」が、それも「少しハッピーな結果」がほしい観客が多かったのではないかと思うのだ。そうなると単なる人情モノになっちゃうんだけどね。

    うん、うん、よく分かります。私も、その点が一番印象に残って、私は「無理にまとめない」作風に好感が持てました。確かに青年団テイストっていうか……。

    2009/12/13 09:37

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