満足度★★★★
すべてにおいて質が高い!
若い女性がこのような本格的な芝居をていねいに作っていることに驚嘆する。昭和の家庭を描写しながら、そのテーマは普遍的だ。うまい役者を揃え、それらの役者を自然に演技させながらも演出家の目指す世界を的確に表現させている。劇中ドラマティックな事件が起こるわけではない。たんたんと物語は進む。それにもかかわらず、われわれは心の中で強い感動を覚えた。吉田小夏お見事である。
役者は全員好演だが、中でも邦子の恋人西沢を演じた足立誠の渋い声と演技にまずしびれた。長女邦子役の福寿奈央の明るい強さ、一発でフアンになった。こういう女性好きだな。二女迪子役の高橋智子の表現した女性の二面性も見事だった。そして、三女和子を演じた天明留理子の若いころの演技と年をとってからの演技、とても同じ人物が演じているとは思えなかった。演技賞ものである。
うまい役者とうまい演出家が出会い、派手さはないが、琴線に触れる素敵な物語を作ってくれた。名作である。