満足度★★★★★
本格犯罪サスペンス系人間ドラマ
広域重要指定事件第126号「連続女性切断殺人事件(通称・使徒事件)」の特命第四班による捜査とその指揮を執る管理官の家族を描いており、今までに観た3作品が現代版泉鏡花あるいはレトロSF的な一種古風な風味だったのに対して、本作は本格犯罪サスペンス系の人間ドラマ、な趣き。
まず「ガツン」と来て後から「ズシン」と来る重量級でありながらもストーリー展開とその語り口によって休憩なし160分(!)の上演時間も「ここから先が長いのかな?」と思っているうちに「え、この流れだともうすぐ終わりだよね!?」となり、事実終わってしまう、な感じ。(体感的には2時間ないくらい)
開場時から「狂ったダイアモンド(Shine On You Crazy Diamond)」冒頭のような音が流れており、舞台上では「シ者(←ダブルミーニング)」たちが携帯をいじっているという状態。プログレも好きな身としてはここでもうワクワク、もとから高い期待値がさらに上昇。
そうこうして開演時刻になると謎の赤い服の女性に導かれるようにシ者たちが一点を見たところで暗転、特命班の指揮を執る管理官の家庭をザッと見せてからその翌朝の特命班顔合わせならびに早速の会議シーンとなり、ここでごく自然に事件の内容が示されるというスマートな出だし。
以降、特命班の捜査(会議と取調べ)を中心に管理官の家庭も見せつつ進行、2人いる犯人それぞれの事情(?)も含めてありきたりのコトバながら「現代社会の病巣を描く」、みたいな。
捕まった「第二の使徒」は自分の前にもう1人いた、という意味ではなく「使徒は大勢いる」と言うし、2人の使徒は本来の意味の「確信犯」だし、被害者たちも清廉潔白ではないし、改めて現代社会は病んでいるなぁ、と…。
最後に判明する「第一の使徒」の正体は予想通りどころか見え見えながら、そもそも真犯人捜しのミステリーではないし、それ以上に人間ドラマとして観応えがあるので全く問題なし。
それどころか、「死にたい」と言っていた第一の使徒に対してプロファイラーが「貴方が貴方を許せるまで……そんな風に生きてください。」と締めくくることにツボを突かれる(「トドメをさされる」の方が的確か?)。
そんなこんなで、緊張感が終始途切れることなく、無駄な部分も全くなく、オープニングからエンディングまで引きつけられっ放しの充実した160分、大変満足。