『新熱海殺人事件』『ロマンス』『鬼~贋大江山奇譚』 公演情報 北区つかこうへい劇団「『新熱海殺人事件』『ロマンス』『鬼~贋大江山奇譚』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    『鬼~贋大江山奇譚』スピーディで勢いはある
    演出がスピーディ、演技には気迫があり、勢いがあった。

    物語も面白さはある。
    ただし、納得はできない。

    ネタバレBOX

    鬼と呼ばれる民がいた。それを都では退治するとい名目で次々と滅ぼしていた。
    その中の生き残りの鬼の女、伊吹は、都の信綱に助けられ、100人鬼を殺せば人になれると言われ、鬼退治を続けていた。伊吹は信綱に惹かれていて、「人」になりたいと思っているのだ。

    一方、かつて鬼退治で勇名を馳せた、信綱の昔の友、虎造は、無辜の民を殺戮することに嫌気をさし、自らが「鬼」となって、大江山で鬼の生き残りたちと徒党を組み、都を脅かしていた。
    伊吹は、都の命により大江山の鬼退治に出かけるのだが、伊吹は虎造に見初められ、退治できずに戻ってきてしまう。
    大江山の鬼たちを退治することを迫る都と大江山の虎造に挟まれた伊吹は悩む。
    自分が鬼退治をするのは、「人」となって信綱のもとへ行くことなのだが、討たれる鬼の気持ちもわかるからだ。

    戦いに勝った者たちが、「人」であり、負けた者たちは「鬼」と呼ばれ退治されるという歴史ロマン的なストーリーに、鬼の女、伊吹を巡る恋愛が絡むストーリーで、なかなか面白いと思う。

    そんな話だが、前半は正直退屈してしまった。しかし、後半、鬼と都が対峙するあたりから、ぐっと面白くなってきた。

    国の統一の名のもとに、都の周囲の人々を「鬼」と呼び征服してきた。
    征服した側にとっては、統一した国づくりというのが、「正義」であり、征服された側にとっては、一方的に攻められ、その復讐が「正義」となる。

    ここに、正義の名のもとの「暴力の連鎖」がある。

    征服された側の生き残りたちは、徒党を組み、都を脅かす。都の人を襲い金品などを奪ったりするのだ。彼らにとっては、それは復讐であり、自らの行動には正当性があると思っている。復讐することが正義だからだ。
    一方、都としては、住民を守るために彼らを排除しなくてはならない。しかし、最初は彼らの殲滅を目論んでいたのだが、途中からは、首領の首1つでよいとする。つまり、徒党を解散すればよいというのだ。
    いったんそれで話は収まったのだが、鬼たちはやはり納得できず、再度都に反抗をする。

    ここでポイントなのは、「鬼」として都のために働いた伊吹は、鬼退治の功績として「人」と扱われ、都に取り立てられているのだが、大江山の「鬼」虎造の愛を受け入れることで、再び都に立ち向かうことになるのだ。

    このことは、つまり、愛によって、「暴力の連鎖」を「断ち切る」のではなく、また「繋いだ」ということなのだ。しかも、これが続くことを高らかに宣言する。
    このストーリーは現代の映し鏡のようなのだが、単にそうであることを見せているだけで、どうあるべきなのか、のようなものや、解決を提示してくれない。問題提起というわけではなく、「暴力の連鎖」を宣言する伊吹の姿はまるでヒーローのようで、それを賞賛しているようにしか見えない。
    ここは見ていて、すっきりしない、気持ちがよくないのだ。

    また、細かいことだが、登場人物には、女性が2人出ている。そこで「美」「醜」(あるいは年増)という2軸の、ありがちな手法で笑いを取ろうとする。
    美しくない、あるいは年齢が高いほうの女性を笑い者にするという手法だ。
    もう、そういう設定はいいんじゃないかと思う。ストーリーに重さがあるだけに、そういう方法で笑いを取ろうとするのは、まったく楽しめない。
    男性である私がそう思うのだが、女性の目からはどうなのであろうか(とは言うものの実際は、女性の観客はそれなりに笑っていたのだが・・・)。

    殺陣はとてもいい。動きもキレも素晴らしいと思った。
    しかし、ダンスシーンが何回かあるのだが、下手というより雑に見えた。
    舞台が狭いからのびのびできないからか? 手足やフリの順番をただ追っているように見えてしまった。
    いずれにしても、これは印象が悪い。殺陣ぐらいのレベルであればいうことなかったのだが。

    劇中、レベッカや広瀬香美などの歌が流れる。それは、それほど悪くはないのだが、時代劇的な内容で「ロマンスの神様」で踊られるのは、ちょっと苦笑してしまった。

    また、殺陣のところに流れる音楽のボリュームが大きすぎるのと、殺陣がいいのにその音楽があまりにもワンパターンで、せっかくの殺陣を殺してしまったように感じた。
    さらに、殺陣中の台詞のときに、忙しなく音楽のボリュームをいちいち下げるのだが、音楽と生の声の台詞の音のレベルが違いすぎて、台詞が貧弱に聞こえてしまうのが、残念。

    役者たちは力みのようなものがあったのだが、好演だったと思う。特に主人公の伊吹の面構えというか、目の感じはなかなか印象的。主人公を張っているという気迫を感じた。

    これは公演自体とは直接関係ないのだが、観客の多くは、出演者の家族や知り合いが多いようで、温かい雰囲気だったのだが、関係者の知り合いらしき子ども連れを見かけた。その中で、終始、子どもと母親がしゃべったり、子どもが立ったり座ったり、動いたりという家族がいて、舞台への集中を妨げてしまった(ちょうど視線の端にその姿が入るし、声は意外とよく聞こえてしまう)。
    子どもと見たい気持ちはわかるが、発表会ではなく、一般客もいるのだから、劇団側として前もって考慮してほしいなあと切に思う。

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    2009/11/27 05:33

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