蓼喰ふ虫 公演情報 TOKYO PLAYERS COLLECTION「 蓼喰ふ虫」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    原作(小説) 谷崎潤一郎の「蓼食う虫」の舞台化、他で舞台化されたか知らないが、何て濃密(蜜)で味わい深い物語であろうか。舞台美術が物語の核心を突くようで、対外的には夫婦という体裁を取り繕うが、内実は隙間風が吹くといった情景を見事に表出している。

    「現代の夫婦が演じる、約100年前の夫婦の話」であるが、現代でも色褪せることなく、いや時代が変わっても人の心に忍び寄る「浮気」という「病気?」に翻弄される夫婦は多分、いや間違いなくいるだろう。
    説明にもあるが、既に夫婦関係は破綻しており離婚を念頭に置いているが、小学生の子供のことを考えると、決断できず先延ばしにしている。100年前には無かったであろう言葉「仮面夫婦」、それを当時(昭和初期)の雰囲気を醸し出し抒情豊かに描いた珠玉作。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は 柱と梁で外観を作り、その内にソファや丸テーブル、椅子が置かれている。奥は摺りガラスのような引き戸、上手は木目の美しい戸、下手には小箪笥がある。観るからに形だけの夫婦のような 隙間だらけの家(光景)、離婚の鍵を握る子供は途中からしか登場しない。「子は鎹(かすがい)」というが、この家には鎹も見あたらない。

    好きで結婚した女なのに、なぜ妻になると、欲情しなくなるのか。セックスレスが原因で不和に陥った斯波夫婦。夫・要(秋本雄基サン)は勝手気儘に娼婦・ルイズと情交し、妻・美佐子(榊菜津美サン)は夫公認の男・阿曽と逢瀬の日々を送る。関係はもはや破綻しているのに、子供・弘のことを考えると離婚に踏み切れない優柔不断さ。 夫婦から相談を持ちかけられた要の従兄・高夏の尤もらしい説明にも…。

    ぐずぐずと煮え切らない態度、何となく自然発展的に夫婦関係が解消できないかを探っている様子。なんと虫の良い思いであろうか。
    また美佐子と阿曽の結婚話…阿曽が添い遂げる約束はしない。将来の気持を拘束する、不変ではない心に約束など出来ないという説明。都合が良いというか こちらも虫の良い話に聞こえた。夫婦の思いや在り様は、当事者でなければ解らない、まさしく「蓼喰う虫」も好き好きなのだろう。

    舞台は昭和初期を思わせるような雰囲気が漂うが、それはスピード感ある現代とは違う時間がゆったりと流れているような感覚。劇中で美佐子の父に同伴し文楽など観劇する場面、サラッと当時の粋な遊びー風俗といった情景を描く。その父や愛人・お久の和装姿、美佐子やお久の髪型が時代という風情を漂わす。

    ラスト、布団の上に座り、行燈に灯された要とお久の顔 見詰め合う様はゾクゾクとするような艶めかしさ。新たな男女関係に発展しそうな予感が…。雨音・強風の音響、葉影・妖しく揺れる照明といった舞台技術も見事な効果を発揮する。
    現代の実際の夫婦である、秋本雄基さんと榊菜津美さんの瑞々しい共演に観(魅)入らされた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/09/23 11:00

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