海をゆく者 The Seafarer by CONOR McPHERSON 公演情報 パルコ・プロデュース「海をゆく者 The Seafarer by CONOR McPHERSON」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    先入観で観逃したら損です
    アイルランド、ダブリン北部の海沿いのさびれた町の古びた家が舞台。
    50代の演技派男優5人だけの翻訳劇というと、あまりにも地味で敬遠して
    しまいがち。事実、観客動員は苦戦しているらしく、リピーター割引を呼び
    かけたり、PPTの回数も増やしている。
    でも、先入観で観逃したら損だと思う。
    重厚だけど、決して重苦しくはないクリスマスらしい作品。
    5人の俳優のチームワークも良く、退屈するのではというのは杞憂に終わり、
    自分も同世代ですが、羨望すら感じました。
    「よくぞ、この作品を選び、配役を実現してくれました」と感謝の気持ちで一杯。時間が許せば、もう一度観てみたいほどです。
    詳しくはネタバレで。

    ネタバレBOX

    目が不自由でわがままいっぱいに1人で暮らす飲んだくれの老いた兄リチャード(吉田鋼太郎)の面倒を見るため、長く家を離れていた弟シャーキー(平田満)が帰って来た。彼はアル中で禁酒している。2人の家には気が優しいが、飲み汚く、恐妻家のアイヴァン(浅野和之)が出入りしている。クリスマス・イヴの夜に、シャーキーの元恋人の現在の恋人ニッキー(大谷亮介)が身奇麗な紳士風のよそ者ロック・ハート(小日向文世)を連れてやってくる。シャーキーは恋人の一件からニッキーには好感が持てず、毛嫌いしていた。しかも、ハートはシャーキーの忌まわしい過去をなぜか知っており、シャーキーもこの男にどこか見覚えがあった。5人の男はポーカーに興じ、時に辛らつに語りあいながら、世は更けていった。シャーキーは自分の命を賭けた大勝負に出るが・・・。
    ロック・ハートは人間の姿を借りた「悪魔」という解釈らしく、アイルランド人に
    対比する英国人風に描かれているのだそうだ。
    リチャード役の吉田は膨大なセリフと大胆なアクションをこなし、強烈な印象を残す。身の回りのことが思うようにできない苛立ちと加齢で増す気短さがよく伝わってきた。眠っている間に眼鏡を失くしたために動きに不自由さがある浅野は少年のようにかわいらしく、大谷のニッキーは年がいってからも恋人ができるような男のもつセクシーさがある。小日向は、にこやかな柔和な顔の裏に残酷さがひそむ。以前、インタビューで「こにこしていい人そうに見えて、実は邪悪という役を演じてみたい」と答えていたから、まさに念願の役を得たと言えよう。
    クリスマスプレゼントを送ってくれた女性からの手紙に目を通していたシャーキーが差し込んだ朝日に振り向くと、階段の脇の壁の聖母マリアの絵画が浮かび上がる幕切れが素晴らしい。
    俳優各自の動きについては演出の栗山民也がかなり細かく指示を出したとかで、実に自然に動いてみせる俳優を見ているだけでも見事な芝居だ。年をとっても喧嘩ができる友だちが傍にいて、自分を思いやってクリスマスプレゼントをくれる人がいる生活っていいなあ、と思えました。

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    2009/11/22 22:53

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