ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】 公演情報 elePHANTMoon「ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    立ちすくむような
    じわっと見えてくる物語の構造の中で、
    なすがままになっていくような
    逃げられない感覚にとらわれて・・・。

    ある種の美学に取り込まれて
    目が閉じられず、
    息を殺して見続けてしまいました。

    ネタバレBOX

    舞台のトーンに織り込まれるように
    次第に物語の設定が明らかになっていきます。

    妙に納得できるというか、
    受容しうる設定のなかで、
    次第に状況が観る者の感覚をくわえ込んでいく前半。
    違和感はあるのですが、
    そういう感じがありだと思えてしまう
    不思議なナチュラル感が舞台にあって。

    役者たちの緻密な間の作り方や仕草の積み重ねに
    観る側がその世界に取り込まれてしまう。
    で、登場人物たちがため込んでいる
    滓のような、何かを蝕んでいくような感覚までが
    爪の間から伝わるように沁み込んでくるのです。

    その感覚が、
    雫一粒でコップの水が溢れるがごとく
    堰を切って流れだす・・・。
    愕然とするくらいに淡々と
    刺殺のイメージや
    自刃のシーンがやってくる。

    そこから、まるで魔物の鎖が外れたように
    キャラクターの深層に醸し出された
    欲望のなすがままに
    物語は進んでいきます。
    何かが崩れたあと、
    陥没が次々に周りの家を飲み込んでいくような感じ。

    役者たちの瞬き半分くらいの絶妙な間が
    蟻地獄に落ちていく感覚にしなやかさを織り込んで・・・。

    ブランクの舞台にリアリティをもった狂気の気配が流れる時間。
    ナチュラルに部屋に差し込む光を見ながら、
    手首から流れ出した血をそのままにしておくような、
    なすがままに堕ちて染まっていく
    逃げ出せない諦観を含んだ感覚がやってくる。

    しかも、それだけではすまず
    観客は
    さらに底がもう一段割れたような
    声を立ててしまうような鮮やかなエンディングに
    息をのむことになるのです。

    観終わって一呼吸おいて、
    ハマカワフミエからやってきた
    深くてどす黒く澄み切った質感に
    ぞくっとする。

    それにしても、なんなのだろう・・・、
    明らかに何かが外れてしまった世界なのに、
    物語の流れを受け入れてしまう自分。
    甘い毒を舐めて、蝕まれていく感覚に
    抗わず身を任せるような、怠惰な嫌悪感。

    蠱惑感に苛まれる自分には
    否定する感情が降りてくるのですが
    でも、自分をその場から動かさない
    未必の故意のようなものも生まれて。

    とても笑えないようなひどい話だとも思うのに、
    なぜかすらっと笑えてしまう部分すら
    いくつもあって・・・。

    映像作家を「すらっ」とその家に受け入れてしまうみたいなシーンが
    前半にありましたが
    その感覚って物語を受け入れる自分にもあるのです。

    好みが分かれる作品なのかもしれませんが
    少なくとも私は、
    作り手側の魔力に囚われてしまったみたいです。

    何気に私をその世界に絡めとり幽閉した
    マキタ作劇・演出の美学のようなものと
    それを具現化させた役者達の力に
    鳥肌立つような想いがしたことでした。






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    2009/11/20 07:20

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