マニラ瑞穂記 公演情報 文学座「マニラ瑞穂記」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    【初日】とにかく #下池沙知 さんを観てほしい。演劇好きなら観なきゃダメだ。登場したその瞬間から"いち"が"いち"だった。終演まで1ミリの隙もなく"いち"が生き抜いた。俳優とはそういうものだと理解してはいるけれど、それを本当に目の前で観られる奇跡に、誇張ではなく目が離せなくてずっと追いかけながら感謝した。
    正直に言ってしまえば、彼女の"もん"を観たいと思っていた。ちょっと弱い面を見せる役がフィットすると思えたから。と同時に"いち"を観る予感もしていた。登場する女性の中で最も振り幅の大きい人物で、壊れていく人間の弱さが滲み、クルクルと表情を変える。下池沙知さんの雰囲気とはかけ離れた人物に思えるけれど、だからこそそのキャスティングは面白く魅力的であり、極上の演劇体験ができる。自分の存在価値や意義を見失っていき、人を羨み、他者を信じることもできなくなっていく"いち"。グラスを煽る度に、少しずつ、そして確実に落ちていく。人の心の奥底を見透かしてやろうとするような鋭い上目遣いを観ながら、恐れをなす我が心の穢れを実感する。
    それでも、他者の秘密を暴きながら絶望の縁でジタバタする"いち"を救い出したくて、身請けする覚悟で、20日までにもう一度アトリエに行かなければならない気がしている。

    何度か観てきた大好きな作品。美術も演出も真新しさや特別なことはないけれど、丁寧に創られていた。
    その中で違いを一つ挙げるなら、シズの存在の意味や意義の深まりだろう。寺田路恵さん演じるシズの鋭い眼光がとらえた世界や人間の愚かさについて考えさせられる。とても印象的だった。

    感染症に対する恐怖を乗り越えて観ていただきたいホンモノの演劇がココにある。観逃さないで。

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    2022/09/07 00:08

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