世界は笑う【8月7日~8月11日昼まで公演中止】 公演情報 Bunkamura「世界は笑う【8月7日~8月11日昼まで公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    前半は正攻法のリアリズムに徹した、わらいの絶えない人情喜劇だった。新宿の街角での、袖振り合うも他生の縁ともいえる、人々の人生のちょっとした交差(川端康成や、万引きした男=どちらも廣川三徳、傷痍軍人のアコーディオン引き=山内圭哉)。
    セット変って、落ち目の喜劇劇団三角座の舞台へ。結核療養から帰った看板役者(大倉孝二)の、光の当たらない憤懣からのやさぐれぶり。緒川たまきのコメディエンヌぶりと、戦争未亡人(松雪泰子)に片思いの新人裏方の兄(瀬戸康史)のかけあい。ヒロポン中毒から脱出したコント作家志望の俳優の弟(千葉雄大)と恋人(伊藤沙里)。周囲も芸達者ぞろいで面白い。「どう台本おもしろい?」ときかれて、上の空の感じで「おう」と答える間合いだけで笑わせる(これは山内圭哉)。正統派リアリズムはケラにしては珍しいが、これはこれで見事で、前半だけでなんと2時間を飽きさせない。

    20分休憩入れて3時間45分。特別な興行でもないのに、これだけ長い芝居は珍しい。しかし、最後まで充実した時間を過ごせる、たっぷりとした豊かな芝居だった。

    ネタバレBOX

    後半の、長野公演前の温泉宿の場面になると、一気にケラ・ワールドになる。中年女優(犬山イヌコ)の前に、亡夫(ラサール石井)が現れて、昔を懐かしむ。女興行主(銀粉蝶)は急に戦争中の過去と現在がごっちゃになり、座長の夫(山西淳)を奪った女(伊勢志摩)を絞め殺そうとする。大金に目がくらんで手を出すなじみのラーメン屋(マギー)を見とがめる戦争未亡人。弟のヒロポン中毒で見る恐怖の幻影は、ブラックでオカルトな世界が現出する。などなど。花火があがるたびに響く音響と、花火に照らされてきらめく照明も心地よい。

    さらにエピローグでは最初とは別の裏街の盛り場のセットで、「もの悲しく」、同時にかすかな希望も感じさせて終わる。

    死んだと思っていた夫多々見走(かける)が、生きていたのは意外だった。弟の看板俳優と二役の大倉孝二。最初、走が現れた時、弟かと思わせ、次は生前の回想かとも思わせ、次第に、胃や戦後13年のその場に現れたのだとわかる。観客に発見の楽しみを味わわせる、この微妙なチューニングはさすがである。

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    2022/08/28 12:46

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