実演鑑賞
満足度★★★★
1899年の大みそかにカリブ海の島でジプシーの売春婦から生まれた「透き通るように白い肌」の男の100年の生涯を、一人芝居で語る。一人芝居というのは単調になりやすいが、さすが加藤健一、緩急自在に様々な登場人物を演じ分け、1時間40分を飽きさせない。舞台美術と照明、映像も効果的に使い、アフリカ、ベニス、ナチス時代、ロンドンなどの時代と背景を示す。舞台上の円形の台がパカっと割れて、ナチスのカギ十字とムッソリーニのイタリアの国旗がずらーーっと並ぶ趣向は工夫である。
ベニスでジプシーの一団の仲間になって、憲兵に捕まった娘を奪いに行く役を義侠心から引き受ける。憲兵隊で袋叩きに合いながら、目的を達するシーンはまず、第一のヤマ。床に這いつくばりながらの熱演。
そして、なんといっても最大のヤマは、クロアチアのナチスの強制収容所での、ユダヤ人犠牲者たちの墓穴掘りの道化。戦犯容疑を晴らす裁判での判事役とスカラムーシュのパントマイムは、この舞台の白眉だった。
コロナ禍が続くが、後半の初日の夜の客席は、8割5分の入り。大した人気である。芝居と言えば女性客が多いものだが、加藤健一の芝居は男性客も多い。