満足度★★★★★
名脚本とベストキャストの幸運な出会い
私にとってワースト1の演出家の舞台で、買おうか買うまいかさんざん迷ったけれど、観られてよかった!
今まで、神野三鈴さんと、山崎一さんが出た舞台でダメな作品にお目に掛かったことがないので、今回もお二人が作品に深みを与えてくれるに違いないと思った通り、本当にこのお二人が、情の通った素晴らしい人物を造形して下さっていました。
最初、ミュージカル界の貴公子が多喜二?と心配したのも、杞憂に終わり、いつもは、ミュージカルの歌唱の井上さんが、地声の歌唱で、見事に多喜二役を好演。特に、独房での歌は心に沁みました。
多喜二が主役ではなく、むしろ、周りで彼を支えた家族や、彼を見張る刑事達の心情に光を当てた描き方が、さすが井上ひさしさん!
あんな悲惨な題材をよくこれだけ笑いに満ちた物語にできるものだと、ただもう感心しました。
多喜二の台詞が少ない分、一層彼の言葉の一つ一つが胸にずしんと響きました。
小曾根さんの静かな音楽ともマッチングして、秀逸でした。
ただ、最後の多喜二のアップ映像は、どうも興醒めの感が。あれは、、多喜二ではなく、井上芳雄のCDのジャケ写のように見えて、ちょっと肩透かしな気がして、残念でした。