普通じゃない普通【7月20日~24日公演中止】 公演情報 劇団水中ランナー「普通じゃない普通【7月20日~24日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。【重ねた人々】観劇
    葬儀場の待合室を描いた「重ねた人々」は、同時上演中の出産の待合室を描いた「迎える人々」の”生”を強く感じさせる内容だ。悲しいはずの「死」、それを「生」との対で表し、人の普通ではない感情を丁寧に描いている。葬儀という非日常に、ありそうな情況を絡めた人間ドラマ。設定の妙は言うまでもないが、死を通して生の尊さが伝わる、その意味で2公演の同時上演は説得力あるもの。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央奥に黒っぽい背景、左右は湾曲したオフホワイトの壁。上手にベンチスツール、下手はクッションスツールがいくつか置かれている。全体的にスタイリッシュな印象であるが、白と黒の配色は鯨幕=葬儀場といった感じもあり上手い作りである。

    男関係が激しかった母の死を悲しめない主人公・佐藤育美(天羽莉子サン)、一方 長兄の死を素直に悲しめず、逆にホッとした気持の小林佐和子(小林風生子サン)が、葬儀場の共同控室で知り合う。佐藤家の長男・恭介(高品雄基サン)は、同時上演中の「迎える人々」へも出演しており、妻が出産するため葬儀を抜け出し産婦人科へ。葬儀場の係(担当者)・外崎泰子(大曲美依サン)は、育美の知り合いで葬儀の進行を遅らせるなどの便宜を図っていた。葬儀場のモットーは”使(利)用者に寄り添う”らしく融通が利くらしい。

    育美の母は自分たちの父と離婚し、スナックを経営しており男関係にだらしなかった。葬儀場には今付き合っている男(育美たちと同年代)も参列しており、嫌悪感を露わにしている。小林家の長兄は障碍者で、両親が亡くなった後、誰が面倒を見るのか?といった老親介護とは別の問題を抱えていた。次兄は家を出て行方不明、将来的には自分(佐和子)が面倒を見るのかといった不安から解放されて、ホッとした心境に戸惑いがある。逃げた次兄を羨む気持と同時に非難する気持、その本音と建前を区別できない曖昧な気持を整理するのは容易ではない。

    実は、佐和子の父は次兄の行方を知っており、長兄が亡くなったことも知らせていた。それでも葬儀に参列しない。代わりに次兄が働いている店の人・吉田将真(堀之内良太サン)が来て手紙を…。"長生きしてほしい、しかし出来れば自分より先に死んでほしい"。切実な胸の内を明かす。両親は障害のある長兄の面倒を見ることで精一杯、次兄や妹のことは といった ひがみも生じる。両親は障害がある子が生まれて、次の出産が不安 いや怖くなるはずが、次兄や妹が生まれている。子が愛おしくないはずがない。

    恭介は佐藤家の長男であるから喪主だと思う。母の死、その葬儀と妻の出産が重なったという稀な設定であるが、「死」を通して「生」を語るという見事な人生ドラマ。恭介は、自分が父親になって初めて知る子への愛情、生前は母と距離をとっていたが、それでも母の名前の一字をもらい「愛恵」と名付ける。離婚し女手一つ、子供2人を育て上げた苦労が少し分かったのかも知れない。

    物語はスナックで働く従業員が、娘とは逆に良く面倒を見てもらったこと。小林家では祖父が議員で世間体があることから次兄の代行業を依頼するなど面白要素も入れるが、根底には人間(親族)の理屈では語れない深い愛情が見えてくる。
    繰り返し出てくる台詞…心の貸し借りは無し=後悔しないように生きる。公演は「死」や「生」の時だけではなく、今を大切に生きることを力強く伝えるようだ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/07/19 18:24

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