ザ・ウェルキン【7月21日~24日公演中止】 公演情報 シス・カンパニー「ザ・ウェルキン【7月21日~24日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一幕65分休憩15分第二幕70分。

    ザ・ウェルキンとは英語の古語で“天空”の意味。日本だと“天つ空”みたいな感じか。1759年、ハレー彗星の到来に湧き立つ英国の片田舎。裕福な屋敷の少女が無惨なバラバラ死体で発見される。犯人として男女2名が逮捕され、裁判の後、男はすぐに公開縛首。屋敷の使用人であった共犯の女(大原櫻子さん)は事件のあらましについては黙秘したが自身の妊娠を主張。当時の死刑制度では妊婦は死刑を免れることが出来た。その真偽の判定の為、集められた陪審員は12名の妊娠経験のある女性。ベテラン助産婦・吉田羊さんはかつて自身が初めて取り上げた赤ん坊である彼女の命を何とか救おうとする。

    客層は大原櫻子さんのファンが多いのだろう。11000円の高額チケットながら、きっちり入っていた。恐るべし大原櫻子!初めて観たが魅力的な女優。(LIVEはフェスで観たことがあるがピンと来ず)。序盤の鬼気迫った存在感に呑まれた。
    吉田羊さんは手堅い。観客のガイドラインとしての役割を粛々とこなす。
    那須佐代子さん、凛さんの親子初共演にも興奮。(観ていて初めて知って驚いた)。佐代子さんのメタ台詞、「自分のお腹を痛めて産んだ子ですもの。可愛くない筈がない。」に反応する観客もちらほら。

    ネタバレBOX

    バケツに小便、搾乳、大原櫻子さんはキャパのデカい良い女優。声色が少々物足りない。
    ちょっと遣り取りがTVドラマ調なのが気になるところ。那須凛さん等が突然、「彼女はやっていないんじゃないか」と言い出す展開が不自然。(懸命に搾乳する様子を見ていたからと云うことなのだろうが)。
    ホンと演出が上手く噛み合っていない気も。多分“神”が関係する話なのに、日本人には実感として理解出来ない為ズレが生じているのか?悪魔を見た女の話、妄想が現実化したと嬉しそうに語る大原櫻子さんの話。

    自分の産んだ娘を自ら手に掛けるラスト。この世からTHE WELKINへと。矢張り足りないのは大原櫻子さんの見ていた風景。何故にハレー彗星をどうしても見たかったのか、だ。生と死の狭間でゆらゆら揺らめく頼りない蝋燭の火。後ろの壁が手前にせり出してくる。

    演出加藤拓也氏のけれん味と戯曲の狙いとが互いに殺し合っているような弱さ。ラストはハレー彗星が大原櫻子さんに直撃するぐらいやるべきだった。

    吉田羊さん演ずるリズは少女時代、勤め先の屋敷の主人(の友人?)にレイプされ子を孕む。産んだ我が娘は母親の図らいにより小銭で売られる。その娘はサリー(大原櫻子さん)と名付けられ、小さい頃から売春を強要され犯罪の道に走る。散々な人生を送ってきた彼女は、好きでもない暴力的な夫と暮らす日々の中、何処かから理想の男が自分を攫いに来てくれることを夢想している。その願いが叶ったのか、突然男が現れると彼女を誘い連れ去る。だがセクシーで魅力的なその男は邪悪な欲望の塊で、ありとあらゆる悪事を働く。サリーはそんな男の生き様を全肯定する。男に命じられるまま、勤め先の屋敷の少女を誘い出し、少女は身に付けた高価なアクセサリーを奪う為に無惨に殺される。後始末を命じられたサリーは死体をバラバラにして暖炉に捨てる。
    「どうでもよかった」とサリーは言う。「死刑を免れたら、アメリカに行って男のように好き放題に生きたい」と。そんなサリーの心象風景に愕然とするも産み捨てた負い目があるのか、リズは彼女の側であろうとする。妊娠が証明され、死刑を免れるサリー。
    しかし、大切な娘を惨殺された屋敷の主人(母親)にとってそんな判決を受け入れることは到底出来ない。役人に賄賂を渡し襲わせ、暴力的にサリーを流産させる。このままでは妊娠していないサリーは公開絞首刑にされてしまう。サリーはリズに誰も見ていないこの場で殺して貰うことを懇願する。自身の最期の尊厳の為に。リズは天空を仰ぐ。

    0

    2022/07/18 06:07

    0

    2

このページのQRコードです。

拡大