私の恋人 beyond 公演情報 オフィス3〇〇「私の恋人 beyond」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    初演を観たが、今回は題名に「beyond」が付いている。小説を読んでから観たのが仇したか初演は(小説の)筋を追い切れず、演出は面白いが楽曲のバランスがいまいちだったりした。進化した「私の恋人」が観られるのだと確信し、前回は最後方席だったが今回はなるたけ前の方(どうにか中程)を取り、役者の表情が見える観劇はできた。
    のんの歌唱が劇的によくなり、渡辺えりとのハモりは泣かせた。劇の方は3○○の世界である。ただし歌が多めの。
    舞台が進む内、(だいぶ忘れていた)話の筋を微かに思い出す。
    ・・主人公の青年は、ある特別な人物(男)の事を追っている。男が飛ばす車の助手席には女が居り、青年は彼女と恋人であろうとする者なのである。「特別な男」が余命の限られた身で人類史を辿る旅をする中、どん底から拾い上げたのが彼女で、挑戦が終りを見ない前に男は倒れたので、彼女は己にそれを継ぐ使命を課している。青年はその男と同時には生きていない。一方この青年は、原始時代、ナチス占領時代、そして現代日本と三つの人生を転生し、しかもその記憶を持つ存在なのだが、「どの人生」においても常に彼女の存在を探していた。ついに出会った彼女と、彼は恋人となるものの、決して「彼のもの」にはならない彼女とは別れの予感の中にある。とてつもない挑戦をした男をリスペクトしながら、それを否定せず彼女をどう愛そうかと迷っている・・大方そのような筋だったと記憶する。この小説が描いた図は一体何なのかと考え、手が届きそうに感じたイメージはこう。・・一人を愛することと人類に思いを馳せること、両極に見える両者は同じである、という方程式を成立させる哲学を持ち、それによって生きる。人生は終わらず続き、不在の中に存在を見、存在していても不在の影が重なる。彼は彼女を得るために、というより彼女を得ることの価値を最大化するために、そしてそれに相応しい自分であるために、壮大な物語を紡いでいる。

    一時間半強のステージは目まぐるしく、小日向文世とのん、渡辺えりと、歌い踊れる4名のアンサンブルもガッツリ動き、ソロも歌う。
    ある所までは筋を追っていた自分も3○○の不可思議の世界にいつしか浸り、漂う情感に身を委ね、そこはかとなく湧く切ない怒りや、軽やかな気分や、跳躍の不安と情熱に飲まれた。

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    2022/07/15 02:56

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