満足度★★★
レシピと厨房と材料と腕前と
大胆な脚本の改編など特になく
地道なカバーに思えたが、
配役の妙・音響プランなど戦術が確かで、楽しめた。
特に、村岡さん演じる兄アキトシが
ハンマーで殴られてトイレにぶっこまれた後
血塗れで出てきた時の空間の歪みが好きだ。
「あ!合コンかぁー!」
大変痛快だった。
また、奥野亮子演じる3号ことケイコが
算数について語る長ゼリが秀逸だった。
「1-1=0。わかったのよ。
小学校4年にして算数の意味が。」
痺れた。
こういった後から思い出してもグッとくる瞬間
(サッカーなら得点)を生んだのは
演出の非凡な手腕のなせる業に他ならず、
後悔しない観劇になった。
が!!!!!
大学の施設で1000円で上演するのと
魔窟 タイニィアリスで2000円で上演するのとは
意味合いが違う。
また、杉田鮎味を上演するのと
松尾スズキを上演するのとは意味合いが違う。
メンバーが10人前後いるのと
4人とでは意味合いが違いすぎる。
タイニィアリスの僅か120席クラスの空間を埋めるのも
この4人には重荷であるように感じた。
4人とも身体・声共に小さく、それも物足りなかったが、
それ以上に単体で2000円とれるメンツではなかった。
ベテランが混じってないと厳しい。
脚本と劇場の存在感が、役者を上回っていた。
大人計画は実は2作品しか観劇の経験がないのだが、
鑑賞して強く実感したことがある。
技のデパートである凄まじい俳優陣が、
特に照れ隠しの要素でもある「笑い」をがっつりとった上で
鋭いメッセージが乗っかると
松尾スズキの戯曲は最大の破壊力を発揮するということだ。
誰にでも操縦できるもんじゃない。
そればかりは数ヶ月の稽古ではすぐに解決しない問題だと思う。
「シーンを成立させた」だけだったら、
料理が出来上がっただけに過ぎないと思う。
それらを予測した上で、当日は最前列に座った。
ぎりぎりだった。
一番後方の席に座っていた観客に4人のバイブスは
届いたのだろうか?(特にサチコの)
今回、2000円は作品の値段じゃなかった。
「社会人劇団になって経費が増したことから
必要になった値上げ」に見えちゃった。
昨年10月の作品が1000円分の価値で、
今年10月の作品が2000円分の価値だとは
思ってないのでは?
かつて、ペニノがマンション公演をやったように
本当にプレハブみたいな手狭な閉鎖空間で
1200~1500円での上演が妥当だろう。
プロトシアターやアトリエセンティオ、
実際に工場跡であるKAWAGUCHI ART FACTORYなど
アリスを7日借りるより低予算で済みそうな場が
あった筈である。(狭ければ迫力も増す)
大人計画誕生の地とか、観客には関係ない。