て 公演情報 ハイバイ「」の観きた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    なぜこんなに伝わってくるのだろう
    どこか軽妙な感じにつられて
    最初は漫然と見ていたのですが、
    たちまち舞台上の時間や
    登場人物の想いに引き入れられて・・・。

    しかも、一通りの物語にさらなる奥までがしっかりと用意されていて・・・。

    声を立てるほどに笑ってしまっているのに
    同じ時間に
    どんどん心がキャラクターの想いに
    満たされていく・・・。

    凄い。

    ネタバレBOX

    東京芸術劇場の小ホールに
    対面形式の舞台が設えられて、
    とある家族の
    祖母の死の直前から
    葬儀に至る風景が描かれていきます。

    彼女の最期の時間と葬儀の風景が、
    2つの視点で繰り返して演じられていくのですが、
    その効果にやられました。
    アクリル板に描かれた二つの絵が繊細に重なって
    平板だったものがたちまち立体感をもってやってくるような。

    父母の個性の豊かさや
    その育て方に確実に影響を受けた
    子供たちのあけすけな想い。
    泥を落としていない野菜の瑞々しさのようなものが
    観客が身構える暇もなくどんどんと入ってきます。

    意地を張りあったり、ためらったり
    押し付けたり・・・。
    地層のように積もった思いが露出していく中で
    ひとりずつの
    ナチュラルで不器用で、でもそれぞれに真摯さをもった個性に、
    見る側の心が共振していく。
    その行き場のなさ加減が
    なんというか愛しむような実感とともに
    観る側に満ちていきます。

    家族の喧騒のなかでの
    祖母の死の静寂なさりげなさにも
    心を打たれました。
    その透明感が
    物語の裾野のように広がって
    生きてのこる家族たちの姿を
    一層鮮やかに浮かび上がらせて・・。
    祖母の不自由な手を
    棺の内に収める葬儀屋さんの
    とまどいのおかしさが
    素の色を与えるように
    生々しい死の現実を呼び起こします。

    繰り返し側の時間のなかで、
    教会に棺桶を運ぶ場面。
    泣きつづける長男の想いに
    観る側もたまらないほど心を染められて・・・。

    ちょっとした縁で入り込んできた
    キリスト教会の価値観に
    家族丸ごとはめられる時の滑稽さ・・・。
    朗々とした牧師の讃美歌と
    家族の戸惑いが積もって
    どうしようもなくはじける姿に
    抱えきれないほどのおかしさがこみあげてきて
    そのあとに深く逃げ場のないペーソスが
    不思議な突き抜け感とともにやってきて。

    終演後しばらく呆然としておりました。

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    2009/10/04 08:25

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