満足度★★★★
シアターユニット・サラ第1回公演
樋口一葉の名作『にごりえ』を21世紀の新宿二丁目に置き換えた、とある。そればかりか、パンフレットには、沈みゆく都市イシの伝説が説明されていて、沈みゆく都市に夫の失踪の行く末を重ねている。作者は、現在大学の准教授だそうで、この作品の原形で2007年の文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞したらしい。こう連ねてくると随分観念的な難しい作品と思われるかもしれないが、そんなことはなく、演劇として楽しめる舞台だった。作者自身も舞台の袖で楽器を担当していた。最初、4人の登場人物が、登場しないユウキを相手にしたモノローグを繰り返す。そこで、作品世界をはっきり描き出したのがよかった。明解な舞台を支えたのは、4人の演技力である。とりわけ、思わぬ展開を見せるリキとタカを対照的な人格として演じてみせた、若手俳優の担った部分が大きいと思う。ただし、エピローグへの展開は、やや説明が足りなかったのではなかろうか。