夫婦レコード 公演情報 劇団青年座「夫婦レコード」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/06/02 (木) 14:00

    思わずもらい泣きしてしまうような場面が幾度と訪れる。笑える場面もたくさんある。自分が昭和世代だからではないと思う。ホームドラマがとりわけ好きだからでもないと思う。それゆえ、間違いなく秀作だ。22年ぶりの再演ということだから、見逃すと損するかも。

    劇団道学先生の作家、故中島淳彦さんの作品だ。道学先生の舞台は最近、見たことがあって、やはり中島さんのDNAが受け継がれているんだな、と今思い返して痛感する。そのDNAの源流を探る作品を、青年座が演じてくれたというわけだ。

    舞台はいかにも昭和の一軒家というしつらえで、温泉旅行に出かけて心臓発作で死亡した妻の葬儀後という場面から始まる。残された一家は夫と5人娘。この5人の娘はそれぞれ性格が違っていて、それが家族の中で補完しあっている感じもしておもしろい。さらに、その娘一人一人と父親との人間関係が絶妙だ。この人間関係が少しずつ解き明かされていくのがこの舞台の真骨頂なのだろう。
    時代は、王貞治がベーブルースの記録を抜く、という1977年。今ならAEDなどがあって救命され、違う展開の物語になるのかもしれないが、当時は救命される可能性は低く、そのあまりにも早い突然死を夫は受け止められずにいる。これからゆっくりと夫婦の時間を楽しもうといろいろ考えていただろう。日ごろはいて当たり前という感じだったとは思うが、大切なパートナーを失って「もっと一緒に話したかった」と号泣する夫は本当に痛々しい。
    その父を、5人の娘がそれぞれの性格を前面に支える。家族の一員に男性もいるが、それは次女の夫、三女の婚約者である。この男性二人もそれぞれの立ち位置で家族の一人として頑張ってふるまおうとする。ここも大きな見どころだ。
    実はもう一人男性が後段に登場するのだが、ここで書くのはやめよう。登場人物一人一人がある意味で主人公となり、全体の物語を紡いでいく。
    昭和という上向きの時代背景だから輝く物語なのかもしれない。だが、世の中の仕組みや世情が違う今の時代でも、ホームドラマが受けないと言われている今でも同じように輝く物語があると思う。そんな物語を紡いでくれる作家の舞台を見たい。

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    2022/06/03 09:38

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