花柄八景 公演情報 Mrs.fictions「花柄八景」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い…お薦め。
    舞台美術と物語がうまく馴染んで、一瞬のうちに独特な世界観に誘われる。落語の噺は、生身の落語家とAIが喋った時、どちらが面白いかといった現代的(設定は20xx年)感覚を取り入れて面白可笑しく展開していく。登場人物は5人、そのデフォルメしたキャラ設定は、落語という何となく古典・和風といった固定観念を打ち破って妙な存在感を放って立ち上がる。公演自体が、落語のマクラ+本題+オチの構成のようで、分かり易く親しみが持てる。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    落語家・花柄花壇(岡野康弘サン)宅の座敷。上手 床の間に掛け軸や壺、中央に座卓と座布団、下手に畳んだ布団、廊下奥に暖簾(揚幕?)が掛けられている。舞台と客席の間は庭、沓脱石が置かれている。冒頭は、整然とした佇まいであるが、物語の展開によって掛け軸が落ち、破けた暖簾といった荒れた状況を見せる。人の情況と事の状況を重ねるような舞台美術が世界観をよく表わしている。

    落語家・花柄花壇が落語噺、地獄八景亡者戯の稽古、その枕(マクラ)としてあの世とこの世の違いを説明する。あの世(多くは地獄)は無臭だが、この世は何とも言えぬ甘い香り。ちなみに極楽は…。そこへ弟子(前座)のプラン太(ぐんぴぃ サン)がAI(可愛いバーチャル・キャラクター)との噺対決の知らせ。AIは芸事でも人間を凌駕し、花柄一門は解散する憂き目。自宅も幽霊屋敷と噂され、鉢(今村圭祐サン)と苗(永田祐衣サン)が興味津々覘きに来る。弟子が去った屋敷に、鉢、苗、そして橋の下で暮らしていた燐(前田悠雅サン)の3人が同居するようになり、再び活気を取り戻す。逃げ出したプラン太は、呉服訪問販売員として師匠宅を訪れるうちに、再び落語に魅了され出す。師匠である花壇が訪問販売の口上を言わせるが、聞き終わって「マニュアル通りだな」と苦言。話芸(術)の難しさをそれとなく諭す。

    物語は、典型的な落語家師匠、その元弟子・プラン太と、パンク・ロック風の鉢と苗、さらに飄々として掴みどころのない燐、それぞれが放つ雰囲気、その外見ー衣装や化粧等が異質であるが、妙に馴染んで活き生きと輝き出す。AIに負けて自暴自棄のような生活は、今のコロナ禍の閉塞状況が重なるが、それでも歩みを進めることが大切、と噺ているよう。時として伝統や仕来りといった拘りを見直すことも必要、そんな思いを登場人物を介して表現する。

    公演は、照明の諧調が雰囲気を上手く醸し出し、人物の心情を効果的に表す。美術にある植物蔦等の印影が人間味を滲まし、それとなくAIといった人工に対置させる巧さ。
    ラスト… 多くの花に囲まれた舞台(冒頭の匂いに繋がる)、台詞はプラン太が燐に教えた「おあおとがよろしいようで(=後続・後継者の準備)」の意味が、上手い洒落となっている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/05/13 16:53

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