実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/05/12 (木) 14:00
座席1階
価格4,500円
息をもつかせぬ会話劇。東京湾岸の高級タワーマンションのパーティールームに同窓生の女性たちが集まるという設定だ。一見「女の幸せ」の争いとも見えるが、実はもっと複雑だ。見終わってストンと落ちるところがない。だが、これがこの舞台のいいところなのだろう。
「携帯の電源を切って」というお約束の前口上の演出家を排して登場するのが、タワマンの女性コンシェルジェだ。この若い女性が終盤、重要な役割を果たすのだが、それは見てのお楽しみ。主人公は続いて登場する仲のいい3人の同窓生だ。
結婚して主婦となり、大学に合格した一人娘がいる女性。親子3人でパーティーに参加する「円満な家族」だ。続いて、事実婚で形成外科医のパートナーを持つ自らも医師の女性。有名大学を出て医師となり、子どもを持つこともなく仕事に邁進し高級マンション暮らしという経済的な成功を遂げている。さらに、結婚と離婚を繰り返し4人の男の子を産んだ、都営住宅に住む美容師の女性。今の彼氏はウーバーイーツのような配達員で生活は苦しい。
かつて「負け犬論争」というのがあった。結婚して子供を産まない女性は「負け犬」という扱いだ。会話劇が進行する中で、低所得をさげすむようなニュアンスの言葉や、子どもを産まない女は幸せでない、みたいなせりふが出たりして、聞いているだけでハラハラする。仲がいい同窓生と言っても、本音では友人を下に見て少しの幸せや安全を感じようとする。男にもそういうところがあるが、女性の会話劇でそういう本音炸裂の場面を見ると、なんだがため息が出てしまう。
切れ味鋭いナイフのような言葉で切りつけ、その直後に返り血を浴びる。時折客席を笑いに巻き込みながらも、観客は心から笑えない。そういうところが「ストンと落ちない」という感想につながるのだが、お互いの化けの皮がはがれて本音の戦いになるという展開はおもしろい。これはもう、このような戯曲にのめりこんでいけるかどうかという、好みの問題だ。評価は分かれるかもしれない。