実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/04/25 (月) 15:00
座席1階
若者らしい軽快な会話劇。ソファやクッションなど舞台上の小物をうまく活用した場面転換。そして何よりも影の主人公である「愛」とはどんな女性で、誰なのかという謎解き。完成度が高い舞台を堪能するに価値ある90分だった。
五反田団を主宰する前田司郎氏は岸田國士賞も取った実力派である。今作は2年前の4月に上演予定だったものがコロナ禍で延期された作品だ。本人も語っているようにいつもの倍の時間をかけることができたそうで、細やかなところまで磨き上げられていたという感じがする。タイトルである「愛に関するいくつかの断片」を、客席は一つ一つ拾い上げながらパズルのようにはめ込んでいく。そんな作業をしているような楽しさがあった。
愛するとはどういうことなのか。恋の続きとして愛が出てくるとよく言われるが、本作でもそんなせりふが出てくる。しかし、ここに登場する一人の男は「愛するとはどういうことか分からない」と心の底から分からないという表情で苦悩するのだ。二股をかけるとか、不倫は許せないとか、結婚してお互いが空気のような存在になったとか。客席は七変化のように姿を変える愛を面前にして、前田マジックにかかったように最後まで深く考え込まされてしまう。
あっさり訪れるラストシーンが何だが心地よい。いつまでも浸っていたいような不思議な気持ちで元工場だったというアトリエヘリコプターを後にした。もう一度書くが、この90分は買う価値がある。