不思議の国のアリス 公演情報 壱劇屋「不思議の国のアリス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★

    アンサンブルの妙が際立つSF版『不思議の国のアリス』

    ネタバレBOX


     スズムシの音が鳴り響く夜半、ひとりの女(谷美歩)がウサギ頭の人物と出会う。やがて不可思議な五つの生命体(大熊隆太郎、北脇勇人、半田慈登、湯浅春枝、吉迫綺音)が女を取り囲む。シルバーのコートに宇宙飛行士を想起させるヘルメットをまとった五体は、原色が際立つ照明変化とビート音で激しく上下に体を揺らす。冒頭の静謐な幕開けと対照的なサイケデリックな導入が、私を物語の世界へ心地よく誘ってくれた。さながらSF版『不思議の国のアリス』の幕開けである。

     私が面白いと感じたのは出演者のアンサンブルがよく取れていた点である。冒頭で指摘した踊りもさることながら、中盤で複数名の演者が白紐を使ってあやとりのようにして図形を作り、そこを谷演じるアリスが戸惑いながらも通過していく様子が面白い。あたかも舞台上に別の空間を構築するようにして物語の行く末を示すその鮮やかな動き、脚色・演出・振付の大熊隆太郎を含め演者たちの手際の良さが印象的であった。

     しかしながらこの5人の存在が強すぎたことも事実である。特に前半、タイトなスーツで体の線を強調した衣装は目のやり場に困ってしまった。加えて体のキレの良さではなく表情で演じていた点が気にかかった。この5人が車座でアリスとコミュニケーションをとろうとする場面は、日常動作の身振りや手振りよりも顔の表情が強すぎた。結果体から湧き上がる情感ではなく表情の変化で場面を押し切ろうとしているように感じたのである。動きの面白さで不可思議な世界へ誘ってくれたらよかったのにと感じた。

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    2022/04/23 17:09

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