“Na” 公演情報 PANCETTA「 “Na”」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2022/03/10 (木)

    巧みな身体表現がかもしだす「かわいげのある不条理さ」

     「名前」をテーマにした7本の小編を、ピアノ(加藤亜祐美)とチェロ( 志賀千恵子)を伴い4人の演者(佐藤竜、はぎわら水雨子、山﨑千尋、一宮周平)が次々に演じ分けていく。2020年3月に上演予定だった作品の2年越しのリベンジ上演である。

    ネタバレBOX

     本作第一の魅力は作劇の秀逸さである。作中では数や名詞、代名詞が導くミスコミュニケーションが巧みに表現されていた。それが顕著であった「Called "Sensei"」では、医者と弁護士、ダンススクールの講師がそれぞれを「先生」と呼び合うことで誰が誰を呼んでいるのか次第に混乱していく様子がコミカルに描かれていた。別役実の作品に出てくる、品詞の誤解でドラマを転がす手法で、大人から子どもまで楽しめる「かわいげのある不条理さ」とでもいうような作劇が脚本・演出の一宮周平の眼目だろう。

     定評のある身体表現の巧みさも本作の特徴である。「Ko・So・A・Do」では暗闇のなかさまよう二人の人物が電灯を片手にして闇を掻き分けていく。道中に出現する水の流れや焚き火の炎も演者が表現する。その手付きの鮮やかさ、仕草の丁寧さが目に焼き付いた。 

     ピアノとチェロの伴奏は作品に豊かな彩りを与えた。特に劇中音楽の曲名を観客に考えてもらうくだりでは、コロナ禍で絶えて久しい劇場の一体感を味わう貴重なひとときとなった。この場面を収めた一幕「No name」は、終盤で王様が家来に命じ恋文を認め、思いを寄せる他国の女性とやがて結ばれる「Number」と「Named」の連作の間に据えられほどよいブリッジであった。

     他方で芝居のパートと身体表現のパートがうまく融合できておらず、ぶつ切りになってしまっている印象を受けた。観客に台詞をわかりやすく伝えようとする俳優としての身体と、人にも自然にもなれる変幻自在の身体を同じ舞台の上に上げた点が目論見なのかもしれないが、私は観ていて混乱を覚えた。また演者たちの巧みさには感心したが、作品が変わると前作とはまるで別人のようになる変身の驚きを感じるまでには至らなかった点は残念であった。

     また作者の生真面目さゆえなのなかもしれないが、各エピソードをきれいにまとめようとしすぎていると感じた。登場人物たちが皆いいひと過ぎて食傷気味になったのも正直なところである。「Become a King」で必ず王様になる男の図太さ、「Blue Goat」でみんなから疎まれる青ヤギの鬱屈さといった側面をもう少し深く掘り下げたほうがドラマに厚みが出てくると感じた。

    0

    2022/04/23 17:05

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大