実演鑑賞
満足度★★★★
保坂知寿さん演じる凛とした戦前の女性が気高く美しい。保坂さんは劇団四季出身で日本のミュージカル界のトップスターである。私が観た中では『レベッカ』での怖いダンヴァース夫人や『ライムライト』のコミカルなオルソップ夫人が記憶に残っている。今回はドレスと歌を封印して着物と言葉で最高のパフォーマンスを発揮している。
以下、オフィシャルな説明がこの舞台よりも河上肇の『貧乏物語』に寄っていて誤解を招きそうなので確認しておく。
説明>社会問題としての資本主義...
>「貧乏ってなに?」と問う人すべてに捧げる
この舞台は資本主義批判の話ではないし、「貧乏ってなに?」も直接の関係はない。内容は、当時の職業や暮らしぶりを振り返りながら権力からの圧力に抵抗する家族を描いているといったところ。井上ひさしがなぜ『貧乏物語』という題名にしたのか謎である。
説明>時は大正5年...第一次世界大戦の好景気の最中、
>誰もが少し浮かれて、本当の"貧乏"を見ようとしなかった時代に、
>ベストセラーになった河上肇の『貧乏物語』。
>その河上肇の周りには、こんなにも素敵な女性たちがいた。
『貧乏物語』が出版されたのは確かに大正5年(1917)だが、この舞台は河上が獄中にいる1934年の春の話である。文章として間違ってはいないが説明のポイントを外している。素敵な女性の物語というのはその通り。