いつかのっとかむ 公演情報 パンデミック・デザイン「いつかのっとかむ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/04/07 (木) 14:00

    座席1階

    東京・三河島(荒川区)で約30年前に閉館した街の映画館がイベントスペースとして復活した、その名も「元映画館」。銀幕も映写室も客席の分厚い扉も当時のまま残されていて、改装ではこうした「遺産」を大切に生かしている。「いつかのっとかむ」はこの「元映画館」を最大限活用した、演劇と映画のハイブリット舞台だ。

    観客はチケットを手に入れて開演前に並ぶのは他の公演と変わらない。ただ、開演時間が迫っても観客はなかなか中へ入れない。客席の扉の向こうから「ちょっとトラブルが起きまして」と説明がある。実は、この公演はこの場面から既に、始まっているのだ。

    観客は、自主制作映画を見に来た観客として振る舞うことになる。振る舞う、と書いたのは観客として舞台に参加する形になるからだ。物語は、自主制作映画の上映会で、主催の女性「いつか」さんが現れないといってスタッフが慌てているところからスタート。この「いつか」という女性と友人たちの、小学校時代からのつながりや思い出の場面などを織り交ぜながら、「今を生きる瞬間」を味わい、思索する舞台となっている。

    銀幕は上映会の映画が途中で止まってしまうところまで「映画館」として使われる。役者たちは客席の周りで動き、まさに「舞台」は目と鼻の先。小劇場は客席と舞台の距離が近いが、本作では舞台と客席の境目がないのだから、観客に間近で見つめられる役者側の緊張感が手に取るように分かる。

    日野祥太によると、客席と舞台の境目をなくして演劇が「隣にある」空間を作るのがスタイルとのことで、これまでもカフェなどを会場に上演してきたという。「街は劇場だ」と言った演劇人はこれまでもいたと思うが、映画をテーマに元映画館という会場で演劇を上演するというアイデアはなかなかのものだ。このハイブリッド舞台の世界観に、客席は魅せられていく。

    会場に張られた映画のポスターなど、「芸が細かい!」と感心するほどのアイテムが散りばめられている。そういう仕掛けを確認していくのも、この舞台の面白さだろう。また、別のチケットを買うことで、本作で途中で止まってしまって見られなくなった映画を最後まで鑑賞することができる。

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    2022/04/07 18:38

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