「震災演劇短編集」宮城・東京ツアー 公演情報 Whiteプロジェクト「「震災演劇短編集」宮城・東京ツアー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    Whiteプロジェクトは、2011年東日本大震災の年、演劇による心の復興をめざし「被災地の想いを演劇で世界へ」を合言葉に結成されたという。
    2万人以上が亡くなり、いまだ2,500人以上が行方不明、故郷に帰れない人が何万人もいる。その方々に寄り添うような素晴らしい公演であった。家族を失くす悲しみ、それを乗り越えて生きよう、生き続けようとする力強さを感じた。

    観たのは、Requiem三部作「前夜」「海月と花火」「ニライカナイの風」…それぞれ趣が異なるが、底流には 勿論「鎮魂」が描かれている。
    (上演時間1時間10分)

    ネタバレBOX

    短編集3話は次の通りで、実話をベースに創作している。東日本大震災で亡くなった方々のことを忘れないこと、その人々のことを語り継ぐことが大切。そんな思いを強く感じさせる3作品。しかし、けっして暗く沈んだ物語ではなく、亡くなった方々の思い出の中に、優しく滋味溢れるエピソードを挿入し、生き残った人々が寄り添えるような物語にしている。だからこそ、多くの人に共感と感動を与えるのだと思う。

    「前夜」
    震災で婚約者を亡くした男・濱田博幸(五浄壇サン)と婚約者の妹・櫻田早雪(恋宵サン)。2人が愛を育み結婚する、その前夜と震災前夜が重なる。早雪はもし姉が生きて帰ってきたら…。彼女の気がかりと男の 死んでしまったさ、という諦めと優しさ。テーブルには早雪の亡くなった両親と姉の似顔絵。結婚式には陰膳として用意しようとする2人の心遣い。両親・姉を偲び暫し話し込んでいるうちに、結婚式当日を迎えてしまう。

    「海月と花火」
    ベンチに腰掛ける女性2人。ここは 仙台うみの杜水族館クラゲの水槽前。後景の黒幕に白っぽく揺らぐ影がクラゲを思わせる。高校のソフトボール部のエースでオリンピックに出場した女(フラッシュ智恵子サン)とその部のコーチだった男の叔母(西澤由美子サン)。いまだに行方不明の男の取り留めのない話を続ける。叔母は教師でもあり、2人の思い出話は尽きない。特に食事…そこに生きてこそ という力強さを感じる。

    「ニライカナイの風」
    男(井伏銀太郎サン)が1人、椅子に座り灯篭に絵を描いている。男は潜水士の資格をとり、津波で行方不明の妻を自分で探すタクシー運転手。震災後初めての みなと祭りの夜、流し灯篭に想いを込める。ラストは、「前夜」「海月と花火」の人物も登場し、花火の打ち上げを観ている。照明効果で場内いっぱいに花火が広がる見事な余韻付け。

    井伏銀太郎氏がカーテンコールで、公演の数日前に東北地方で大きな地震(震度6)があり、上演が危ぶまれたことを話した。本当によく上演していただいたと感謝しかない。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/03/21 19:07

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