実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/03/05 (土) 19:00
劇の始まりが、秋葉原のアイドルカフェのアイドルライブのシーンから始まり、その後OL二人の他愛もない会話や、ヤケになって新宿?のショッピングビルで買いまくって手荷物が多い女性と、それを怜悧に眺め、冷たく突き放す友達らしき女性との会話、グルメレポーターをしている姉と、最近看護師を始めた世間知らずで、人を疑うことを知らない無邪気でマイペースな妹との会話など、他愛もない日常のシーンを最初の方で続けざまに、それでいて丁寧に細かく描いていて、その後の実はそれまでのたわいもなく見えたシーンが、おとし屋に所属する女性たちの普段の姿だと言うことが明らかにされる展開が、お見事だと感じた。
あと、落とすターゲットの篠山ファンド社長を演じる俳優が、いかにも裏がある感じの雰囲気と偽物感のある怪しい雰囲気を漂わしていて適役だと感じた。ただし、俳優だけじゃなく、これは脚本にも問題があるのかも知れないが、表の顔よりも裏の顔の雰囲気が目立ちすぎて、人当たりが良い好青年な感じが全然出ていないのには強く不満が残った。
敵役が裏表がある設定の割には、部下との信頼関係がかなり危ういところを強調しすぎ、女垂らしであることもあまりにも分かりやすく描いている上に、おとし屋のメンバーの葛藤も多少は描かれるが、全体としてはおとし屋の側を完全に正しい絶対正義として描き、篠山ファンド社長の側を典型的な女の大敵として描く脚本の単純さが目立ち、キャラクター個人としては魅力あるキャラもいるものの、脚本全体としては、単純明快過ぎて、これでいいのかという相当な不満が残った。学生演劇ではあるまいし、もっと深みのある脚本にしなくては駄目だと思うし、脚本が駄目ならば役者と演出家で脚本の欠点の部分を補強しないと駄目だろうと思う。また、役者も全員ではないが、主役と主役級の役者3、4人が台詞を何度も噛んだり、噛むレベルどころか、台詞を忘れて思い出すために何分か無駄な時間が過ぎていったり、ある役者などは台詞が思い出せない空白の時間を埋めるために急遽アドリブを入れて誤魔化そうとしたが、そのアドリブが上手いどころか、取ってつけたようで、あまりに下手なアドリブ過ぎて、場が持たなかったりといったことが何回となくあり、それでも、それが新人の役者だったらまだしも、20代後半〜30代ぐらいの男性や女性だったりするものだから、余計に見れたものではなかった。
最後のマツケンサンバの曲に合わせて盛り上がり、役者は歌って踊り狂い、観客は手拍子をして上野ストアハウスという小さな会場が一体となり、熱気が溢れたのは良かったと思う。色々、改善点は上げれば切がないが。