RENT 公演情報 桐朋学園芸術短期大学演劇専攻「RENT」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    桐朋学園学生による「RENT」。在学二年の卒業公演でこの大作にどれほど迫れるのか・・客席に座りながら、早くも本作の名曲、名場面の現前を待ちかねる私。
    17:30整理券配付開始、番号を呼んで列を作り、順次入場というテント芝居で見かける手順をロビーで行ない、キャストの家族知人や学生ら観客の熱がロビーから会場に満ちている。
    18:30開演。バンドマンの入場、声が飛ぶ。楽器のチェック、そしてキャストの入場。ライブの流儀で観客も出迎え、開幕は申し分ない。
    終わってみれば、未熟さは多々あれど見事に「RENT」を見せられていた。

    ネタバレBOX

    個人的なツボは、一幕後半のモーリーンによる長尺パフォーマンス(映像で観るオリジナルRENTのは文化の違いか、楽しめないのが憾み)。
    どうしてもオリジナルを追いかけて先走る。一幕終り、テーブルが横一列に並ぶのを待つ。作者ジョナサン・ラーソンが火を吐くようにボヘミアン的自由の希求を謳うLa Vie Bohemeの序奏に鳥肌が立つ。開幕と同じく二幕の始まりも出演者のカジュアルな登場、キャストが一列に並んで歌うSeasons of loveから始まる後半のドラマは若者たちの苦難の季節。ヘテロのカップル、ロジャーとミミは純粋を求める若者ならではの屈折に加え、ミミの病気と薬物依存による衰弱という背負いきれない重荷がのしかかる。レズのジョアンヌは美貌のモーリーンの奔放さを受け入れられず始終こじれ、互いを孤独にする。「人に与える事」しか知らなかったゲイのエンジェルは病状が悪化し、コリンズの長い看病に関わらずついに逝く。友を失った彼らは追悼の歌をブルージーに歌うのだが、悲しみにあってもまだ明るさがある。エンジェルは天国で一切の悔いなく存在していると確信させる、という事だろう。本当の意味で彼らに暗い影を落とすのは、彼らのたまり場である元レコーディングスタジオをRENTし、自由を生きる仲間を映画に撮る主人公マークが夢ついえて現実に妥協し、不本意な職に就くという、現実への「敗北」を象徴する部分。理想を捨てた瞬間だ。
    タイトルのRENTには、舞台となる賃借する部屋の意を超えて、夢を追う者の宿命=貧乏ゆえ家賃不払いが常態化していてもそれは自由に生きる権利の前では些末である、という含みがある。街のホームレス排斥に反対の声を上げる行動(モーリーンのパフォーマンスはその集会で披露されたもの)にも通じる。舞台ではコロス的に歌を支えたり呼応する他、ホームレスや寄る辺ない者として時折登場し、街の風景を作るが、これが中々効いている。
    マークは一度は引き受けたレポーターの仕事を止める。最後のエピソードは離反したカップル、ロジャーとミミの再会。ホームレス化し倒れていたミミをモーリーンとジョアンヌが運んで来る。冷え切った体を横たえた台でロジャーはミミに語りかけ、離れている間ずっと作っていたと言う彼女への歌を歌う。息を吹き返したミミは天国(夢)での出来事、エンジェルが現れ、ロジャーの元に戻って彼の歌を聴いて上げてと言われた事を話す。
    全力で演じ、歌う彼らのスピリッツが伝染し、涙涙の観劇となった。音を外したり、群唱ではハモりパートが弱く主旋律ばかり聞こえたり、と見ながらの不満は多々あっても、音程を感情に優先させる箇所が全くなく、人物を「演じ」続けていたのは好感。「RENT」の世界を丸のみさせてもらった。
    桐朋のミュージカルを担当する信太美奈氏は約20年前同じ肩書で拝見したが、まだ続けておられたとは。学生と同じ目線で舞台作りを指導・演出する様がパンフの挨拶にも滲み出ていた。

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    2022/02/28 13:29

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