満足度★★★★★
優しさと切なさに彩られた怪異譚
山田太一の「異人たちとの夏」などと同系統の優しさと切なさに彩られた怪異譚(でありながらユーモラスでもある)、原作は未読なのであくまで推測の域を出ないが、原作の良さと脚色・演出による面白さがうまく噛み合っている感じ。
壁や押し入れの襖に紗幕を使い、照明によってそこに人物を浮かび上がらせるというのは時折ある手法ながらこの内容には効果的だし、テレビを観ているシーンの見せ方(テレビを表現した装置も含む)や主人公が住んでいるマンションの精巧なミニチュアを舞台下手端に置き、説明する場面でその屋上を開く(立てる?)とフロアの平面図になっているなどというアイデアも見事。
見事と言えば、タイトルロールを演じた安田杏の喜怒哀楽表現も良く、今後の活躍に期待。
また、同名別人の「ちよ」役、神道寺主宰も表情(ドアの新聞受けから見える目だけの演技もアリ)が楽しいし、ある意味オイシイ役。(笑)
さらに、連絡がつかなくなったカノジョの幻影を主人公が見る場面で、カノジョ役の女優(バレエ経験があるんだろな)にトゥシューズを履かせ、抱きつこうとするのをターンでかわすなんて演出も巧い。